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心中日和

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 中学からはじめた?じゃあ、ついていくの難しいかもなあ。
 ふうん、前の学校ではレギュラーか。それならなんとかなるかな。
 うちはね、強いやつが絶対なんだよ。
 三年になってからの転校生でも、強ければ馴染むからさ。
 幸村のしゃべり方は落ち着いていて、穏やかだった。俺に合わせるでもなく、俺を合わせるでもない、年齢よりはるかに大人びた口調だった。
 女のような優しい顔で、物腰は穏やかだが、言うなれば鞘に収められた日本刀の気配がする。俺の本能が、こいつを甘く見てはいけない、と俺に教えた。
 コートの中にいる人数は、思いのほか多かった。
 並んで歩きながら、幸村がフェンスごしに部員の紹介をしていく。
 あの帽子が真田。副部長。隣の長身が柳。マネージャーも兼任してくれている。その近くにいる茶髪が柳生。今打ち合っているダブルスの、赤い髪が丸井、パートナーがジャッカル。ジャッカルはブラジル人とのハーフだけど、日本語しか話せないみたいだ。あと、審判をやってるのが二年の切原。だいたいこれがレギュラーかな。
 部長はおらんの?
 部長?
 部長は、レギュラーには入っとらんの?
 入ってるよ。立海の部長イコール最強のプレイヤーだからね。いないとはじまらないさ
 ふうん、今日はまだ来とらんの
 うーん、隠しておくのも面白そうだけど
 幸村はにこりと笑った。
 部長は俺なんだ
 ……へえ。意外やのう。
 なにか只者でない気配はそのせいか。
 幸村に続いてコートに入りながら、俺はいつもの癖で、伸ばした襟足をいじっていた。幸村は手をあげて真田と柳に合図をし、振り返らないまま言った。
 仁王。君は緊張しやすいほう?
 いいや、と答えた。
 実際は、どちらかといえば緊張はする方なのだが、もしかしてこれはテストではないかという気がしたからだ。
 幸村は柳にうなずき、ラケットを取ってこさせた。俺に渡しながら言う。
 ただ見学というのも退屈だろ、ちょっと打ってみないか。
 面白そうやの。
 幸村の探るような目に、笑いそうになった。いくら大人びて優しげな口調や物腰でも、やはり中学生であり、運動部だ。転校前にレギュラーだった男が入ってくれば、戦力になるか確かめたくもなるのだろう。
作品名:心中日和 作家名:もりなが