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グンジルート捏造

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「おわ、りっ!……っと、」
焼却炉に最後の荷物を放り込んだキリヲが、首を鳴らして深く息を吐いた。キリヲの目配せに、頷いて返した仮面の男がスイッチを入れる。分厚い鉄扉の向こうではぜる発火音。それを確認して奥に引っ込んだ仮面の男を見計らったように、キリヲは焼却炉から離れ、既にへばっているグンジの横に腰を下ろした。
「なんだ、貧弱じゃねぇか、おい」
「…うぜー」
グンジは寝転がり顔の上で腕を組んだ体勢のまま毒吐いた。馬鹿にするような笑みを浮かべたキリヲも、すぐに余裕のない表情になって額の汗を指の腹で拭った。代わるように笑みを浮かべたグンジが身を起こす。
「ジジ、歳?」
「うぜぇ」
「ぎゃっ!?」
珍しいことに降り下ろされたのはミツコさんではなかった。ただの固めた拳であった。それもそのはず、キリヲはこの時ミツコさんを所持していなかった。彼の恋人は、今は彼の自室に大事に転がされていた(転がすのに大事も何もあるかという考えは彼には通じない)。
キリヲは降り下ろした拳を開いて、噛み付こうとする(文字通りであるかどうかはこの際問題ではない)グンジの頭を押さえ付ける。
鉄扉の向こうでじゅっと脂の溶ける音。僅かな隙間から漏れ出す匂い。キリヲは煙草を持ってこなかったことをかなり真剣に後悔した。ジャケットを着ていない、珍しく剥き出した腕を鼻に押し付ける。何度嗅いでもこの匂いは慣れたもんじゃないなと思う。それでもまあ、初めの頃よりはマシになったもんだろう。
「離せっつの!!」
「おう」
「うぎゃっ!!??」
キリヲが急に力を緩めたことで勢い余ったグンジが地面で強かに背中を打った。
焼却炉は城の片隅にひっそりと備えられていた。こじんまりした中庭とも言える場所に、一つ大きな焼却炉が置かれている。持ってきた"荷物"をそこに無理矢理詰め込むのは結構な手間だったりした。

焼却炉の隙間からゆるゆると煙が立ち上って行く。グンジは地面に背を付いたまま、その白さをじっと見ていた。
燃やしてしまえば、誰も彼もない。ただいっしょくたになって煙になって灰になって。それってどうなんだ?考えても中々満足する答えは出ないので諦めた。腰を上げたキリヲにつられたように、グンジは身を起こす。
微妙な顔をしているキリヲを見上げて、さっさと慣れりゃいいのにとグンジは思う。人だって動物じゃねえか。他と何の違いがあるってんだよ。
どうやらその気持ちが伝わったらしい。キリヲは腕を組んで、幾らか険のある顔でグンジを見下ろした。
「人間も動物も、一緒じゃねえか」
先程思ったことを、グンジは幾らか抽象的に言ってみせる。
「ちょっと頭が良いか、良くねえかの違いだろ?」
「そういう問題じゃねえよ」
「そういう問題だろ!!!」
グンジは飛び掛からんばかりの勢いで立ち上がって噛み付くように言う。キリヲは本格的に不快さを示した。
「人を人足らしめるために、理性があるんだろ」
「ンなの……」
反論しかけたグンジを、キリヲが手をつきだして牽制した。グンジは仰け反って言葉を詰める。キリヲは息を吐くと、手を引っ込めてそれ以上何も言及しなかった。これ以上言葉を重ねることが、愚行に他ならないことがキリヲには判ったからだ。動物に説法してやるほど俺は暇でもない。それに自分の考えも答えてやれるほどしっかり固まってはおらず、ただぼんやりとあるだけだったから。

釈然としないままながら、内面に踏み込みすぎたことをグンジは後悔した。馴れ合ってしまえば、情が生まれる。関係は共同戦線くらいがちょうどいい。何時でも殺せるくらいの苛烈さが必要だ。
「……ジジ、今すぐここで死ねって言ったらどーすんの」
「はァ?」
当然のこと、キリヲはグンジに間髪入れず問い返した。驚いてはいたようだが、グンジのそれくらいの行動は予想の範疇に含まれるようで、取り乱すようなことはなかった。
「そら、嫌だなァ」
「実力行使に出たら?」
「殺られる前に殺る」
キリヲはあっさりと言い切った。その言葉には一切の躊躇いなど含まれていない。グンジはそれに内心、全面的に同意した。しかしグンジは、それを口に出しはしない。ただふうんと呟いて見せただけでどんなスタンスも示しはしない。キリヲがグンジの意を取り違えないくらいには、馴れ合っているつもりだったから。




作品名:グンジルート捏造 作家名:みざき