グンジルート捏造
グンジはアキラを抱え上げると、崩れた一角へ脇目も振らず駆け込んだ。キリヲもその後へ援護射撃を行いながら続く。それから銃弾の切れたマシンガンを放り投げ、身を翻してグンジの隣へ並んだ。
「逃げるがぁ?」
「勝ち!!!」
「おい、下ろせ!」
「ヒヨ、姫さんはお前のエスコートは嫌だってよ…?替われや」
「ひゃはっ!ジジてめえ、ナイトってツラかよ!」
――狂ってる。
アキラは頭痛を覚えて頭を押さえた。いや、狂ってるって知ってなかった訳じゃないけど。この状況を楽しめる処刑人どもははっきり言って異常だ。
一団の足音は付かず離れず、けして消えはしない。時折銃弾が足元や細い路地の壁を砕いてはひやりとする。処刑人達が機動性を重視したのか、武器を持っていないから尚更だ。
「どこに行くんだ」
「お城ーっ!」
グンジが前を向いたまま答えた。
「城から下水道に通じてるとこがあってさァ、そこ越えりゃトシマの外に出られんの」
一団の足音が速まったのを受けて、処刑人達も足を速めた。どこか離れた所から喧騒が響いてくる。どうしただろうと、二三思い出す顔があった。アキラは唇を噛むと、小さく首を振って呟いた。生きていさえすれば、またいつか、
路地を抜けて、視界が急に開け目の前に城が現れる。
「グンジ」
キリヲが急に足を止めた。しかしグンジは足を止めず、躊躇いなくキリヲの横を擦り抜けた。
「一つ貸しだ」
キリヲは愉しげな笑みを残し、一度抜けた路地へとまた飛び込んだ。
「おい!」
制止しようとしたのはアキラだけだった。しかしキリヲは振り返らない。
「止めんな」
「でも、彼奴武器も……」
持ってないのに。と続けるのはどうしてか躊躇われた。何時もの鉄パイプを引きずってもいなかったし、元々キリヲが持っていた銃はアキラが持っている。
「ジジはさァ、物にうるせえの。シュセンドだから」
アキラは後ろを向いていた首を前に直した。いつの間にか城は随分と近付いていた。
「だから貸したもんは絶対返させる。二個も貸してンだから、絶対取り返しに来る」
グンジは確信した声で言った。それだけ信頼しあっているのだろうか。何だか不思議な感じがした。