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帝人受短文3作

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ハッピーエンドに嫌われている



 平和島静雄は常々思っていた。自分は何か人生における大切なものから見放されているのではないだろうかと。立腹すると己を押さえる事の出来ない性格、尋常の域を軽く飛び越える能力、他人の人生に災厄をもたらすことに生き甲斐を感じているとしか思えない天敵の存在、どれもこれも穏やかで幸福な人生を送る人間なら持たないものだろう。親からもらった名前に似つかわしくなく、平和にも静かにも暮らせない己の人生はきっと、幸福な結末など迎えられまい。静雄は常々そう思っていた。自分はハッピーエンドに嫌われている。いや、そもそも自分を好いてくれるものなどいないのだろう。そう考えていた。

 そんな彼が恋をした。相手は竜ヶ峰帝人という、年下の少年である。それも彼とは正反対の、名前の仰々しさ以外は普通を絵にかいたような少年である。実はその少年もなかなか尋常でない内面を抱えてはいるのだが、静雄から見れば普通の、それもとても羨ましい普通の人生を送っている少年に見えた。彼が同級の友人と何をして楽しかっただのこんな馬鹿をして大変だっただの、日常を笑顔で語るのを聞くたび、自分の学生時代もそんな風に普通に楽しいものだったらどんなによかったろうかと思わずにはいられなかった。それでも、彼の話を聞いている時間は満ち足りていた。そもそも普通に話してくれるような相手の少なさには定評のある静雄である。友好が恋心に変わったのがいつか定かではないが、とにかく気づいたらもうこいつしかいねえ、というくらい完璧に落ちていた。人生の春、いやそんな穏やかに暖かい季節には例えられまい。灼熱の夏の熱にも似た激しさで恋をした。そうとなれば生来我慢がきくとは言い難い質である。とうとうこの度、相手に想いの丈をぶちまけることと相成った。

 「は、はい!」

 好きだ、俺とつきあってくれ。想い人にそう告げたところ得たのがこの答えである。YES。間違いない肯定。肯定?

 「えっ、いいのか!?」
 「え、あ、はい!はい!あの、僕も」

 好きです、と微笑まれて呼吸が止まりそうになる。いやいっそ止まってもいいような気さえした。この幸福感の中でなら死んでもいい。それこそがハッピーエンドというものではないのだろうか。そう思った。

 「な、何言ってるんですか!駄目です、そんなの全然ハッピーエンドって言いませんよ!」

 感情のままにぼそぼそと呟いた声は、しっかり拾われていたらしい。抱きしめた少年から慌てて静止が入る。続いた言葉に、永年の悩みが全て洗い流される心地がした。

 「大体これから始まるんじゃないんですか!?これから、幸せになるんでしょう?」

 恋人になって二人で幸せになろうってときに、死なれたら僕はどうしたらいいんですか!
 その叫びを聞いて静雄は思った。俺は一体今まで何をくだらないことを悩み続けていたのだろうかと。ハッピーエンドに嫌われていようが構わない。この存在さえ隣にいてくれれば、幸福に終わりなどは来ないのだから。



作品名:帝人受短文3作 作家名:蜜虫