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君が笑うなら、それで

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タクシーを拾って、どうにか帝人くんちのアパートまで来た。
今日は日曜日、何処にも出かけてないと良いんだけど。
松葉杖をつきながら歩いて、やっとドアの前まで行く。

とんとん、と戸を叩いて「帝人くん?」と、その名前を呼ぶ。
返事は無い。
やっぱり出かけてるのか?お昼だし、どっかランチにでも出てるのかな。
何の気なしにドアノブを回すと、俺の予想とは反対に簡単に回った。
鍵、かかってない。

帝人くん、不用心すぎるよ。
相変わらず抜けた帝人くんに苦笑しながら俺はドアを開けた。

薄暗い部屋。
昼間なのになんで日が差し込まないのだろう、と、疑問はすぐに解けた。
窓には分厚いカーテンがかかっている。
まるでまだ起きていないみたいだ。
まぁ、こんな時間だし、そんなことは無いのだろうけど。
俺は勝手知ったるや、電気のスイッチに手を伸ばし、パチリと、電気をつける。


帝人くんは居た。


狭い部屋の隅に、布団にくるまっていた。
電気がついたことに驚いたように顔を上げ、俺を見た。
その目は痛々しいほど充血している。やっぱり、泣いてたんだ。

「みか「臨也さん!!」」
俺が名前を呼ぶよりも先に帝人くんの悲鳴が上がる。
そう、そこには驚きと、何故か恐怖が含まれていた。
想像よりもずっと怯えたような声色に俺は戸惑った。

「帝人くん?」
「ご、ごめんなさい!」
「…え?」
「僕が、僕が居たから、僕のせいで、僕、僕がいなければ、い、臨也さんは怪我しなかった。」
ガチガチと歯が鳴っている。
上手くかみ合わせることさえできないみたいだ。
「帝人くん…?」
俺が一歩近づくと、帝人くんは「ヒィッ」と喉を引きつらせ既に隅に居るためそれ以上下がれないのにズリズリと壁に体を擦りつけ、俺と距離を取ろうとする。

その、異常な姿に俺は思わず足を止めた。

「どうしたの?ねぇ?」
「ご、ごめ、なさい、ごめんなさいっ、臨也さん、ごめん、なさ、い。」
帝人くんは小さな体をさらに縮めて俺を見ようとしない。
まるで叱られた子供のようだ。
「帝人くんは悪くないんだよ?ほら、俺こんなに元気になったし。」
「ごめんなさい、ごめんなさい、許して下さい、僕が、僕さえいなければ、ごめんなさ、い。」
帝人くんは同じ言葉を繰り返し、しまいには「うぅ、」と啜り泣き始めた。
泣きながら何度も何度も俺に許しを請う。

誰も、怒ってなんかしないのに。




「臨也!、何処へ行ってたんだよ、病院抜け出してっ・・・?」
「何処?」
「え?」
「俺を撃った、あの男、何処に居るの?」
「あ、それなら警察に。」
チッと口調荒く俺は続ける。
「俺が撃たれた後、すぐにセルティがあの男を取り押さえたんだよね?」
「え、あ、ああ。」
「なら、なんで帝人くんがあんなに自分を責めてるの?」
俺が思い切り新羅を睨みつけると、ふぅ、とため息をつかれた。
「帝人くんに、会って来たんだね?」
「…俺を撃ったあの男に言われたんだって。『折原臨也を撃てたのは、アンタのおかげだ』ってね。」

「セルティに取り押さえられながら、あの男が悔し紛れに叫んだんだよ。『いつもの臨也なら今のは避けれた。アンタが居たからそのおかげで、折原臨也の腹に穴開けられた、ありがとよ!』と。」
「なんで、そんな「すぐにセルティが気絶させたさ!!」」
新羅が叫ぶ。
「だけど間に合わなかったんだよ、目の前で臨也が撃たれたショックと、男の言葉で、完全に帝人くんは参っちゃったみたいなんだ。」

「帝人くん自身が自分を責めて、自分を許せないんだ。」

俺は帝人くんのさっきの姿を思い出す。
ガタガタと震えながら謝り続けていた。
俺を見ると怯え、泣いた。

「どうすれば、良いの?」
「・・・しばらく会わないほうが良い。今はそれしか言えない。」


なんてこった。
銃で撃たれたことよりも、目覚めた後のほうが俺の地獄の始まりだったんだ。

作品名:君が笑うなら、それで 作家名:阿古屋珠