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君が笑うなら、それで

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君が笑うなら、それで、

それだけで良かったんだよ。



帝人くんが笑ってくれてるなら、俺はどうしようもなく駄目な男になれた。
とびきり優しくて、とびきり甘い、そんなつまらない人間に。
だけどさ、やっぱり本質は残忍で非情な『折原臨也』だったりするわけだ。

今更、本音を言えば。
病院を抜け出して、帝人くんちへ行ったあの日、異常に俺に怯える帝人くんに戸惑った。
と、同時に言いようのない幸福感を俺は感じていた。
帝人くんは、俺にとってはほんとに穢れ無き人で(そんなこと言えば君は『買い被りすぎですよ』と、苦笑するんだろうけど)
たまに、どうしようもなくグチャグチャに汚してしまいたくなる感覚に陥ってた。

だから、あんな風に壊れたように泣きじゃくる帝人くんを見て、俺は興奮した。
強い人だと思ってた君が、意図も容易く闇に落ちて行く。
しかも、俺のせいで。
こんなに幸せなことってない。

帝人くんにはまた笑ってほしいと思いながら一方で俺の何処かが、いっそこのまま壊れてしまえば良いと、そんな風に考えていたんだ。
俺の脇腹に残る銃痕が、これからの帝人くんを一生苦しめて縛り付ける鎖になるのなら、なんて素敵なんだろう。


でも、現実は甘くない。

「僕はわかってなかったんです、僕が、臨也さんの足手纏いになることを。」
帝人くんは俺の大好きなあの意思の強い目で俺を見る。
黒い瞳が真っすぐに俺を照らし、俺は愛しさが募ると同時に逃げ出したくもなる。
その視線の前じゃ何もかも曝け出してしまいそうだ。

あんなに震えて、怯えてたのに、もう、立ち直るんだ。
やっぱり君は強い。

「臨也さんが好きだから、これからも一緒に居たいから。だからこそ、今は僕に少し時間をください。」
帝人くんは小さく微笑んだ。

地獄の入口に立たされた時、このまま帝人くんと落ちていけたらそれも良いな、と、思ってた。
だけど、やっぱり地獄に落ちるのは俺だけなんだね。
君はどうしようもなく綺麗なまんま。

「…うん。」
「臨也さん・・・。」
頷いた俺に帝人くんは泣きそうになりながら一礼する。





馬鹿だなぁ、どうして俺が一瞬でも君を手放すと思ったの?





バキッと良い音がした。
この役目を誰が負うのだろうかと、そんな風に考えてた。
紀田くんか、下手したらシズちゃん?そしたら俺は半殺し確定だ。
だけど心配も杞憂に終わる。
俺を殴ったのはセルティだ。まぁ妥当だろう。

『帝人に何をした?』

そう問われた。
表示された文字なのに、全身から迸る怒りがその文字に感情を与える。

「何って、別に?」
『ふざけるな。』
「ふざけてないよ、むしろ、ふざけたのは帝人くんのほうだ。」
『お前っ!!』

「だって『別れる』とか言うんだよ?」
俺はクスクスと笑う。
『・・・帝人は、お前が好きだからこそ、悩んで・・・。』

はぁ?関係ないよ。
好きなら何をしても良いなら、警察なんて要らないだろう。
「・・・どうして俺が別れることを了承するなんて思ったんだろう。」
きっと離れてるうちに俺と言う人間を忘れてたんだ。
だから、思い出させてあげただけ、俺が、本来、どんな人間だったのか。


殴っても、組み敷いても、噛みついても、帝人くんは悲しそうにはしていたけど怯えたり怒ったりはしなかった。
でも俺が服を脱いだ瞬間、その表情が強張る。視線は傷跡だった。
「…どうか、した?」
帝人くんは視線を下げて、俺を見ない。
「これね、傷跡は消えないだろう、って。」
ビクリと帝人くんの体が揺れる。
「でも良いんだよ。帝人くんを守った勲章だから。」
「それ、ぼ、僕のせい、ですよね。」

俺は僅かに震える帝人くんの顎を持ち上げる。
視線を合わせると、そこに、さっきまでの強い視線は無い。
黒い瞳が濡れて、不安そうに揺れている。
・・・やっぱり、こういう帝人くんも好きだなぁ。
俺は、にんまりと笑う。


「そう、帝人くんのせいだよ。」

許して、と帝人くんは何度も繰り返した。
それは俺が与えた責め苦に耐えられないからだったのか、それともこの傷跡のことだったのか知らないけど。
例えセルティに殴られようと、俺は今上機嫌だ。
久々に味わう帝人くんの体はやっぱり最高だったから。


「帝人くん、なんか言ってた?」
『…何も言えないほど憔悴していた。』
「そう。」

君が俺の傍で笑うなら、それだけで良いんだけど。
もしも俺の傍で笑わないのなら、その笑みになんの意味がある?
俺へ向けられた物じゃないのなら、俺じゃない誰かのための物なら、


そんなもの、要らない。

作品名:君が笑うなら、それで 作家名:阿古屋珠