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君が笑うなら、それで

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「みーかーど、くん。」
一応声をかけて、でも勝手にドアを開けた。
帝人くんは暗い部屋の中で、布団に包まっている。
腰がだるくって動けやしないのだろう、布団の中からそっと顔を覗かせてるところが小動物みたいで可愛い。

「いざやさん。」
「コンビニ飯で悪いけどさ、食べ物買ってきたよ。」
帝人くんは力なく首を横に振る。
「すいません、お腹空かないんです。」
「駄目だよ、ちゃんと食べなきゃ。体力付けて、俺とまた愛し合おう?」

帝人くんの表情が固まる。
「あ、した、学校が・・・。」
「だから?」
俺は優しく微笑む。
明日学校があるから、何?
「いざ、や、さん。」
心底困ったような、懇願するような顔で俺を見る。
そんな顔されたら、余計に楽しくなっちゃうなぁ。

「とりあえず、ご飯にしようよ、ね?」
俺はコンビニの袋を掲げた。


今まで離れていた分を取り戻すように、俺は帝人くんに会いに行く。
帝人くんは毎回困ったような顔はするけど、決して拒否したりはしない。
その、帝人くんの優しさこそが俺を付けあがらせる最大の原因だということを、君は知らないんだろう。

「帝人くん、俺の部屋で一緒に住もうよ。」
これも毎回のように言ってる。
こんなぼろアパートさっさと売り払って俺のところに来ればいい。
帝人くんの帰る場所は俺のところだけ、そしたら、きっともう何処にも逃げられない。
「…僕は、此処が好きですから。」
あーぁ、またフられちゃった。
此処が好きって、そんなの嘘だろう。
ただ、君は俺のところへ来たくないだけだ。

「そう、残念だなぁ。」

これも毎回の合図。
帝人くんがぎゅっと体に力を入れて身構えた。
俺の機嫌を損ねれば、同じ目に合うと知っていながら、それでも毎度同じやり取りをするんだから、帝人くんはマゾなのかな?

・・・もしかしたら、断られると知りながら同じことを聞く俺の方が精神的にマゾなのかもね。



「い、ざっや、さ・・・。」
はっは、と短い呼吸を繰り返しながら、その合間に俺の名前を呼ぶ。
「ん?」
「あと、は…」

ああ、痕は付けるな、ってこと?
明日体育でもあるの?
わかった。
「・・・心配しないで、たくさん付けてあげる。」
笑ってそう言った俺に、帝人くんは顔を歪めた。


ドロドロになって気を失った帝人くんの頭を撫でた。
愛しいんだよ、どうしようもないくらいに。

俺の脇腹に残る傷を見ると、毎回帝人くんは震えだす。
さすがに気がフれるような最初のような怯え方はしないけど。
帝人くんが痛かったわけじゃないし、俺ももう痛みなんてこれっぽっちも無いのに、帝人くんは痛々しげに目を細めて傷を見る。
そのたびに俺は嬉しくなった。
この傷に、まだ意味がある。
この程度のもので帝人くんを縛れるのなら、いくらでも君のために怪我してみせよう。

「ねぇ、帝人くん。」俺は眠る帝人くんに囁くように言う。
「二度と別れるなんて言わないで、・・・次そんなこと言ったら、君の目の前で死んでやる。」

「…わかってないんです。」
眠ってると思ってたはずの帝人くんが喋った。
俺は少しだけ目を見開く。
「何が?」
「臨也さんは、わかってないんです。」
「だから、何が?」

「僕が、僕がどんな思いでああ言ったのか。」
帝人くんらしくない吐き捨てるような言い方に、俺はイラッときた。

「わかるわけ、ないじゃないか。」
撫でていた頭をそのままぐっと布団に抑えつける。
帝人くんは苦しげに呻いたけれど、そんなことはもう気にしてられない。
そのまま、帝人くんの身体に乗り、彼の動きを止めた。

「いたっ…い、ざやさんっ。」
焦ったような声、馬鹿だな、明日学校だって言ったのは君のほうなのに。
どうしてそう俺を怒らせるの?

「…『別れたい』なんてそんな気持ち、俺にはどう足掻いてもわからないよ、一生。」

こんなに、好きなんだから。


君が笑うなら、ちゃんと大切にしようと思ってた。
ベタベタに甘やかして、俺の腕という檻の中で一生愛でようと、そう思ってたんだ。
躾けなんて要らないほど、君は礼儀正しくて従順だった。
だからさ、甘やかし過ぎたのかな?
君が狂いかけたあの時、いっそあのまま狂わせてしまえば良かったね。
俺に怯え、俺から逃げたくなくなるように、そんなこと思いつきもしないように。

俺の下で悲鳴を上げる帝人くんはすごく綺麗だ。

だけど、



此処最近、君の笑う姿を見てないんだ。

作品名:君が笑うなら、それで 作家名:阿古屋珠