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GUNSLINGER BOYⅣ

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目的地は古びた小屋のような所だった。
小屋の中には血飛沫といくつかの死体が転がっていて、何とも言えない臭いが漂っている。

既に作戦一課の連中がそこら中を調べまわっていた。
社会福祉公社作戦一課は、俺たち作戦二課が動く前段階の調査や情報処理等を主な仕事としている。
表と裏のような関係のため、普段からそんなに直接的関わりは無い。

俺にとっては見慣れたものだけれど、襟に細いリボンを巻いた純白のブラウスを着て手にはバイオリンのケースを持った帝人君はその清純そうな雰囲気がこの惨状といかにもミスマッチで、あまり義体を見慣れていない一課の連中の視線を集めていた。
まるで戦場に降りた天使のようだが、バイオリンケースの中身はもちろん銃だ。

「・・おい、」

不意に話しかけられて振り返る。
そこには若干の変化はあるが見知った顔があった。

「あ、ドタチンじゃん!」
「・・その呼び方はやめろ」

不快そうに眉をよせた体格の良い男は学生時代に同級生だった門田京平。
一課に配属されたのは知っていたが会うのは卒業以来だ。
ドタチンというあだ名は俺がつけたものだがいつのまにか同級生や後輩にまで浸透していた。さすが俺。

「お前・・義体の担当官やってるって、本当だったんだな」
「まーね」
「・・・・大丈夫なのか」
「何?俺の心配?」
「お前じゃない。こんな・・」

きょとんとした様子の帝人君と俺を見比べて低い声で呟く。

「お前みたいなのに預けられて、大丈夫なのかこの子供」
「ははっ・・、何言ってるの。もしかして同情してるとか?言っておくけど、コレが普通の子供なのは見た目だけだよ?
 設定した通りに言うことを聞いてくれるお人形さ」
「コレって、おい、」
「いえ、いいんです」

馬鹿にしたように返した俺に何か言いかけたドタチンを帝人君が止めた。

「臨也さんがそう言うのなら、その通りなんでしょう」
「・・・・」

困ったように微笑む帝人君に、なぜか苛立ちが募る。
本当、気に入らない。
なんでそんな平気そうにしてるんだ。何笑ってるんだよ。
俺以外に、なんで笑うんだ。


「ドタチン、な~に喋ってるの?」

割り込んできたのは甲高い女の声。
一課の作業着を着た黒髪の女と糸目の男は帝人君を見るなり目を輝かせた。

「え?何?超かわいいっ!」
「ドタチンの知り合いっすか?」
「義体だよ。作戦二課の」

それを聞くなり、二人は更に好奇に満ちた視線を帝人くんに向けるが、
ドタチンはすかさず癖のありそうな二人組をたしなめる。

「仕事中だろ。お前らさっさと持ち場に戻れ」
「え~ケチっ。私も美少年と戯れたいのに。まさかドタチンそういう趣味があry」
「は や く も ど れ 」

大方、昔から面倒見のいいドタチンのことだ。公社に入ってからもその性質は変わっていないんだろう。
二人とも渋々ながらも言うことをきいて戻っていく。

「ドタチンったら、相変わらずドタチンだね★」
「どういう意味だ」
「ちょっと柄の悪い幼稚園の先生みたい」
「・・どういう意味だ」
「きゃっ 先生こわーい」

適当にドタチンをからかって遊んでいると隣に立っていた帝人君がぎゅっと俺のコートの裾を握ってきた。
俺が他事にかまけている時に彼がする、無言の自己主張。おそらくは独占欲に近い感情からくるものだろう。
どうしようもなく愛しさがこみあげてくるけれど、俺はそれを封じ込めて無言で小さな手をコートから引き離した。
帝人君は一瞬ひどく傷ついた顔をして、でもすぐに表情をもどして一歩後ろに下がった。

不意に、ポケットの携帯が震えた。
画面には作戦二課本部の文字。

「ドタチン、俺、電話出てくるからその子ちょっとよろしく」
「え? あっ、ああ」

視界の端に帝人君が映った。頼むから、そんな顔するなよ。
作品名:GUNSLINGER BOYⅣ 作家名:net