Lion Heart
広い部屋の中には、式典の準備はされていたがイギリスの姿は見えず、参列者が開会をまっているだけだった。
(イギリス・・・?)
一緒に過ごしていた頃は、時間や社交について口うるさかったイギリスの姿が見えない事にアメリカは胸がチリチリとした。
「アメリカ、お前の席は左だ。」
扉を開けたまま立ち止まっているアメリカの背後から、聞き覚えはあるが少し硬い声が響いた。
声の方向へ振り返るとイギリスが立っていた。
「イギリス。なんだい、自分は遅刻するなって言うくせに遅いんだぞ。」
アメリカは、いつもの様にイギリスに軽い文句を言うがイギリスはその言葉が聞こえないかのようにアメリカの脇を通り過ぎると部屋の奥へと歩いて行った。
イギリスの態度にアメリカ胸のチリチリした感覚はさらに強くなっていた。
(なんだい、イギリスの奴。式典が終わったら、イギリスを捕まえて理由を聞いてやるんだぞ・・・。)
イギリスの背中を眺めながらアメリカがそう呟いていると、少し遅れてフランスが現れた。
「アメリカ、お前も席に着け。始まるぞ。」
フランスは、アメリカに一瞥しそう告げるとイギリスの居る祭壇へと歩いて行った。
「わかってるんだぞ・・・。」
結局、先に来たはずのアメリカはイギリスとフランスに急かされ席につく羽目になった。
祭壇へ進むと机を挟んだ左側にアメリカは着席した。
『これより、独立国家承認式を執り行う。』
フランスは祭壇の中央に立つと凛とした声音で静かに宣言した。
作品名:Lion Heart 作家名:815