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これも一つのシズデレラ

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臨也は城に着くとさっさと妹たちとは別れて個人行動に移っていました。

(王子は広間にもいなかったしどこにいるのやら)

しかし王子よりも服確保の方が先決ということで給仕たちなどが慌ただしく働く裏方へ向かいます。
広間から離れた臨也は辺りをうかがいながら歩いていると、廊下の角を曲がったところで誰かにぶつかりました。相手は小柄で自分とぶつかった反動で後ろに倒れてしまったようです。

「うわっと、大丈夫?」
(あー、なんだガキか)

相手が自分よりも背の低い子供でがっかりした臨也は、一応は気をかけるようなことは言いましたが全然心配していませんでした。手を差し伸べようともしません。
それとは正反対に倒れた相手、帝人王子は座り込んだまま臨也に謝罪しました。

「いえっ、すみません、僕がちゃんと前見てなかったせいで・・・」
「あはは、今度から気を付けなよ?」
「はい、本当にすみませんでした」

そう言って帝人王子が顔を上げた瞬間、臨也に衝撃が走ります。
まるで身体中を電撃が走ったかのような衝撃です。臨也にはそのとき自分の身に何が起こったのかわかりませんでした。しかし気がつくといつの間にか帝人王子の身体を抱きあげ腰に手を当て、顔を近づけていました。

「・・・大丈夫?」
「え、あ、はい、大丈夫・・・です・・・けど・・・」
「本当に? 怪我とかしてない?」
「はいっ、ホントに怪我ないんで・・・、ってなんなんですか、この体勢・・・?」

最後の帝人王子の疑問は臨也には届いていませんでした。臨也の脳内はそれどころではなかったのです。

(なにこの子かわいいかわいいかわいいかわいいかわいい! もうそんなちんけな言葉じゃ言い表せないぐらい愛くるしいよ!! そんなに見開いて零れちゃうんじゃないかって思える瞳もその一度も日にあたったことのないような白い肌もまだ成長しきれてない幼い顔立ちも強く抱きしめたら折れてしまいそうなこの細い腰もすべてが愛おしい!!!!! そんな白タイツなんかはいちゃって誘ってるの? もうビリビリに破いちゃってもいいってことだよねハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア)

え、なにこいつ気持ち悪い。
しかしそのようなことを考えているとは感じさせない余裕の表情で、なおも臨也は帝人王子に顔を近づけていきます。

「ねえ、君名前なんていうの?」
「えっ、と、み、帝人っていいます」
「そう、帝人君・・・、いい名前だね。愛してる結婚しよう」
「ええええええええええ!!?」

(えっ、なんなのこの人? なんなのこの人!? なんでいきなりプロポーズ!!? っていうかなんでドレス? 男の人なのになんでドレスなの? ってあれ、男? 男の人だよねこの人? 僕も男なのになんでプロポーズしてんの? しかもいきなり君付けだし僕王子なのにしかもドレスは紫だし顔は近いし僕王子なのに!!!)

支離滅裂です。ですがそれほどまでに帝人王子は混乱していたのでした。
まあいきなりドレス着た初対面の男に抱き締められてプロポーズされたらそりゃあ誰でも混乱しますよね、うん、合掌。

(こんな非日常もっと期待してない!!! 誰か助けてえええええ!!!!!)

そんな帝人王子の心の叫びが届いたのか、タイミング良く(臨也にとっては最高にタイミング悪く)臨也に向かって舞踏会で料理をのせるのに使われていた大きなテーブルが飛んできました。

(テーブル!? えっ、なんで!!?)

間一髪臨也が先に気付いて帝人王子を抱きしめたまま避けたので二人に怪我はありません。

「いいいいざああああやあああああ」
「げっ、なんでシズデレラがここに居んの!?」
(シズデレラ・・・?)

帝人王子はテーブルが飛んできた方に目を向けると、そこにはピンクフリフリのドレスを着た金髪の男、平和島静雄がいたのでした。

「てめえが何かよからぬこと企んでるって聞いてよお、わざわざ迎えに来てやったんじゃねえかノミ蟲野郎」
「はっ、誰がそんなこと頼んだっての。見ての通りさ、今俺すっごい忙しいんだよわかる? 見逃してやるからさっさと帰って馬に蹴られて死ね」
「ああそうだな、なにもいけすかねえお前をつれて帰る必要はねえか。今ここで息の根止めてやればいいんだからな」
「あのさあ、言葉通じてる? だから今シズちゃんに構ってる暇ないの。それに今更王子なんてどうでも・・・」
「あ、それ僕です」
「え?」
「ええと、ですから、あの、僕王子、なんです。全然城の外になんて出ないんで、お二人が僕の顔知らなくて当然なんですけど・・・」

まさに一触即発、そんな二人の間に場の雰囲気のそぐわない弱々しい声が割り込みました。思いがけない介入に静雄と臨也は驚きその声の主を凝視します。二人に見つめられて恥ずかしくなったのか、帝人王子の声はさらに小さくなっていきました。
数秒後、静雄は叫びます。

「てめえそいつから離れろ!!!」

どっちが『てめえ』でどっちが『そいつ』かは判断できませんでしたが、帝人王子は臨也から離れようとしました。ですが臨也の方が行動が速く、腕を掴まれてまたもや引き寄せられます。

作品名:これも一つのシズデレラ 作家名:千華