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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記9

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「っ・・・!」
熱く語る演説に突然入れられた御影の横槍に、にとりは思わず口を噤(つぐ)んでしまった。それと同時に、部屋の外で話を聞いていた青蛙神にも戦慄が走った。
(まさかこやつ、顕界の人間と同じように・・・!)
青蛙神は当時の怒りや絶望が蘇り、思わず部屋の中に飛び込もうとしたが、すんでの所で思い止まった。このまま怒りに任せて入ってしまったら、せっかく恥を忍んで盗み聞きしているのが全てパァになる。それに、神奈子もにとりだったら道を踏み外さず、科学力の正しい使い方を心得ていると言っていた。最後まで聞いてみる価値はある。青蛙神は心を落ち着かせると、再度聞く姿勢に入った。
「あなたはいろいろな武器や、御山の防衛を目的とした兵器も沢山考えてくれていたわよね?アイディアが浮かぶたびに私に設計案を聞かせてくれたじゃない。実際に製造して配備しているのもいくつかある。でも実際はこの幻想郷に御山を大々的に攻めようとするような馬鹿はいない。そんなことをしようものなら、たちまち博麗の巫女や相棒の魔法使い、場合によってはあの妖怪の賢者八雲 紫などに粛清されてしまうから。守屋の神様たちのように。だから本来そういった兵器を造ることにはあまり意味がない。でも、あなたがあまりにも熱心にアイディアを聞かせてくれるから、私はその心意気に免じていくつか製造することを許可した。でもそれは有事の時に限らず、土木作業などにも応用できるものだったから」
そこまで話すと、御影はすくっと立ちあがった。美理も無言のままそれに従う。
「そっそれはっ・・・確かに、一技術者として、あのエネルギーを利用した究極の兵器を造ってみたいとは思いました。でも、もしそれを造ったとしても、実際に使おうなんて絶対に思いません。私は、自分が満足のいく研究や発明ができればそれでいいのです。そして、私の作ったものが、御山の皆の生活に役立つのなら、それだけで幸せなんです!」
自分が立っている場所に少しずつ近づいてくる御影にたじろぎながらも、にとりは一生懸命自分の考え、本音を口に出した。前にも少し書いたが、これまでの御山でのにとりの功績は、目を見張るものがある。にとりの考えだした技術、発明のおかげで天狗や河童の暮らしは格段に豊かになった。その最たるものが、電気エネルギーの実用化である。その功績で、にとりは河童の総合技術開発チームのリーダーに任命され、御影から、天狗の里の中ではあるが、にとり個人用の立派な研究用工房が贈られたのである。今までの流れを見て解るように、御影はにとりのことをとても高く評価している。それは間違いない。しかし、それとこれとは話が別である。御影はにとりが訴えている間もどんどん彼女に近づいてくる。そして、にとりの前まで来ると、すっと右手を上げた。
「・・・っ」
にとりは叩かれると思ったのか、咄嗟に目を閉じて歯を食いしばった。しかし御影はその右手でにとりの頬をそっと優しく、慈しむように撫でた。
「ひゅいっ!?」
突然の予想外な展開に、にとりはおもわず河童特有の鳴き声をだした。
「にとり・・・目を開けて・・・」
御影の声は慈愛に満ちていた。それは、聞くだけで相手の心を落ち着かせてくれるような。そう言われて、にとりは素直に目を開けた。すると、自分の顔のすぐ近く、それこそお互いの吐息がかかってしまうような距離に、優しい笑顔を湛(たた)えた御影の顔があった。
「あなたが御山の皆のことを愛し、皆の幸せのために一生懸命にやってくれていることは、私は勿論、御山の誰もが知っているわ。無論、あの神社の神様たちもね。私もにとりのことが大好だし、頼りにしている。だからこそ、危ないことはしてほしくないの。それは解ってくれる?」
改めてここで書いておくが、この二代目天魔『相羽 御影』は、絹のように美しく長い黒髪をもつ、男は勿論女をも魅了してしまうような中性的な美貌の持ち主である。当然ながら一部の大天狗旧家臣を除く、全ての天狗、河童にとって憧れの的だ。御他聞(ごたぶん)にもれず、にとりもファンの一人である。そんな御影に、こんなに顔を近づけられ、頬を撫でられながら、本人にはそんなつもりが無いとはいえ、甘く語り掛けられれば、
「・・・はい・・・わかります・・・」
と、このように惚けてしまっても、いた仕方ないことである。
「ありがとうにとり。でもあなたの情熱も充分理解できる・・・だから、あなたに課題を与えます」
御影は頬を撫でていた手を離し、今度はにとりの手を包み込むように握って、真剣な面持ちで言った。対するにとりは、ただいま絶賛惚け中である。ポーっとなっている。
「はい・・・」
辛うじて受け答えができているように見えるが、実際は御影の話している内容なんて少しも頭に入っていない。今御影が何を言ってもおそらくハイと答えるだろう。
「あなたには、御山の代表として、地底の者たちと盟友になるための架け橋になってもらいます。そして、もしそれが実現したら、あなたにあらゆる分野での研究を行うことを許可しましょう。・・・うん、我ながらいい考えね、それでいきましょう」
またとんでもないことを言い出したものである。今言ったことがもし現実になったら、妖怪の歴史がひっくり返る。いや、妖怪だけじゃない。世界、ここで言えば幻想郷の歴史の大変革である。まぁ地底の有力者たちをみれば、そんなに大それたことではない様に思えてしまうが。