the end of shite
#2 月曜の朝
廊下、という普段見慣れない場所ですれ違う悟天はどこか遠く感じる。もうすぐ入学して三ヶ月だというのにまだ着慣れない制服に着られて、俺が知らない奴らと肩を並べて歩いていた。悟天は俺の姿を見つけると手を挙げながら陽気に笑いかけてくる。
「トランクスくん!学校の中で会えるなんて珍しいね。」
悟天は今春、俺が通っている高校に入学した。(ちなみに悟飯さんの母校とは違う学校だ。悟飯さんの母校は、今自分が通っている学校よりも遠方の街にあり、偏差値も少し高かった。)学年によって教室のある階が別になっている上に生徒数も多いため、俺と悟天は校内ですれ違うことさえ珍しかった。
「ちょっと一年の教室に用があったんだ。じゃ、俺急ぐから、またな。」
まるで他人のように一言だけを残して、足早に通り過ぎる。あっけない一瞬。悟天はもう少し話したそうに俺を見ていたが、先に行ってしまった友人に呼びかけられて逆方向へと走っていった。バタバタと走る靴音が雑踏に紛れて耳に届く。長い渡り廊下を歩きながら、窓の外を見る。初夏の空はもの悲しいくらいの青だった。不意に背中にちりりとした痛みが走って思い出す。
俺の背中には今、昨日女と寝た証となった無数の爪痕が残っている。こんな背中を見たら悟天はどんな反応をするのだろうか。きっと、何の傷かなんてわからないだろう。ひたすらに疑問符を浮かべる親友の顔を想像すると、思わず笑みがこぼれる。
暖かさを通り越して暑さを感じる風に気付く。明日からは夏服だ。白いシャツはきっと今より幾分か悟天の動きやすさに貢献するに違いない。無意識にそんなことを考えている自分に気付いて、俺は今すぐにでも窓から飛び降りてしまいたい気分になった。
作品名:the end of shite 作家名:サキ