the end of shite
#3 No name
その日の夜、俺は夢を見た。何もない真白な部屋。天井も壁も床も、まるで白熱灯の様な白。その四角い小部屋の真ん中にぽつねんとベッドが置いてあり、その上で俺は誰かを抱いている。後ろから腰を打ち付ける、妙にリアルな音が空間に響いた。まさに一昨日のフラッシュバックのようだ、と俺は夢を見ながら第三者のように思う。ぎしぎしとベッドのスプリングが軋む音とむせ返るような呼吸。そのまま目線を真下、ちょうど自分が抱いている相手に移した。そこで俺はとんでもない発見をしてしまう。視界に映る人物は明らかに女ではない。男だ。そんなわけはない、と第三者の自分は大声で否定していながら、夢の中の自分はごく当たり前のように性急に腰を振っている。ピストンの動きに合わせて抱かれている相手の喘ぎが聞こえる。どこかで聞いた、懐かしい声。まさか、そんなはずはない。行為に没頭する姿とは対照的に、心中では冷や汗が止まらない感覚があまりに不快だった。背中を伝う汗が零れ出し、足元から水浸しになって溶けてしまいそうだ。
「どうだ、良いだろ。もうお前には俺しかいない。」
夢の中の自分が相手に対して強気な発言をしている。腰を動かしながらも、息一つ乱さずに告げる奇妙な様はまさに夢の中独特のものだった。その言葉を聴いた相手は、揺れながらゆっくりと首をひねってこちらを向く。目に涙を溜めて、口元からはいやらしく唾液が垂れている。火照った顔で喘ぐそれの顔を確かに知っている。早鐘のようになり続ける心臓に耐え切れず、俺は叫びだしそうだった……、そこで目が覚めた。
夢の中ほどではないものの、体中に汗をかいていて、動悸も酷い。ゆっくりと上体を起こし、思わず胸元を押さえ込み、額の汗を腕で拭った。寝間着の代わりに身につけているTシャツが肌にへばりつく。やがて心臓の高鳴りが治まり、静寂と闇が俺の身を包んでいた。落ち着いたところで再び横たわれば、今度は先ほどまで見ていた夢を思い出し、下腹部が疼き始めた。自分の夢に欲情しているのだ。思わずベッドから起き上がりティッシュを手に取って、悔しさとも屈辱とも言えない気持ちのまま、徐に下腹部に手を伸ばし自身を慰める。既に固く熱くなっていたそれは、夢の光景を思い出して触れてやればすぐに達した。欲望の液を吐き散らかされたティッシュの塊を見て嘲笑が零れた。自分はなんて浅ましいのだろう。
夢の中で自分に抱かれていた人物。それは間違いなく、自分の幼馴染であり親友でもある、孫悟天だった。
作品名:the end of shite 作家名:サキ