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無人島に持っていきたいもの

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 そう思っているような、何とも淡々とした食べ方だった。何を食べても表情にさしたる変化はなく、あれを食べたいなどというリクエストを受けた事もない。
 そんな彼が、わざわざ声に出してそんな事を言うだなんて。予想外の反応に、サンジは一瞬言葉を詰まらせた。そしてむっと顔を顰め、当たり前だろ、おれだってこの二年遊んで暮らしてたわけじゃねェんだよ、と吐き捨てるように言った。その返答にも、矢張り彼はただ面白そうに笑うだけだった。
 本当に、あの男はどうしてしまったのだろう。
 ナミやロビンの話から察するに、サンジ以外の人間には彼は以前までと何も変わらない態度を見せているらしい。変化を感じ取っているのは、サンジだけのようだった。
 何故、自分だけに。
 何度考えてみてもさっぱりわからない。ここ二年、当然の事ながら彼との接触など一度としてなかった。なのにどうして、ゾロはあんな変化を遂げてしまったのだろう。
「………………」
 いや。
 元々あの男は、サンジに対してだけ特別態度が悪かった。その『特別』の部分が多少変わったくらいで、動じる必要なんて全くない。多少の奇行など、見なかった事にして受け流してしまえばいいのだ。いずれあの男も飽きるだろう。それまでは、こちらから無闇につついたりせず放っておけばいい。
 早く飽きやがれ、と顔をしかめつつ胸の中で独り言ちる。あの顔は、なんだかわからないが心臓に悪いのだ。見慣れない笑顔も、左目の傷も、あまり頻繁に目にしたくはなかった。ひどく落ち着かない気分にさせられて、たまらないのだ。
 以前までのように、食事時くらいしか顔を合わせない程度の距離感へと早く戻りたかった。そうすれば、自分もこんなふうにあの男の事ばかりに気を取られる事もなくなるだろう。
 ゾロが閉めていったドアをもう一度睨み付け、サンジは再び深い溜息を吐いた。






 ゾロとそういう事をした回数は、片手指で足る程だった。
 どうしてそんな事になってしまったのかと聞かれても、上手く説明する事は出来そうにない。衝動に突き動かされてというのが一番それらしいかもしれないが、それだけかと問われればそんな事もないように思えるのがまた厄介だった。
 ゾロとそういう事をするのは、決まって激しい戦闘を終えた後の事だった。戦闘時の興奮が冷めやらず、少しだけ判断力が鈍っている時にその衝動はやってくるのだ。
 身体の芯の方がじんわりと発熱しているような感じがずっと抜けていかず、どうすれば良いのか自分自身ですらわからない状態に陥る時がある。時間を置けば徐々にその感覚は薄れていくのだけれど、それを無理矢理に解消させられて初めてその衝動が何なのかを理解する事が出来た。
 何の事はない、ただ単純に自分は発情していたのだ。戦闘時の興奮に触発されるようにして、そういった欲求にも火が着いてしまっていた。そしてゾロは、それを的確に嗅ぎつけていたのだ。
 初めてゾロと寝たのは、空島での事だった。
 連日続く宴の最中、酒を取りに戻るといった名目でメリー号に戻ったサンジは、何故か一緒についてきたゾロにラウンジで押し倒されてしまった。
 その瞬間は怒りより驚きの方が大きく、なんなんだこの状況はと呆気に取られるばかりだった。男にのし掛かられている自分という構図が、どうにも現実味がなかったのだ。
 当然の事ながらそんな構図など思い浮かべてみた事もなかったし、そんな危機感をもって彼と接した事もなかった。だからこそ、薄暗いラウンジの床に押し倒されているという状況だというのに、呑気にぽかんと口を開けて目の前の男の顔を眺めていられたのだ。
 はっと気が付けばシャツは胸の上の辺りにまで捲り上げられてしまっていて、ズボンのホックにも手が掛かっていた。ようやくのように頭の中で警鐘が鳴り響きだす。
 こりゃヤベェと慌てて藻掻きだしたサンジを押さえつけるように、低くきっぱりとした声でゾロが言った。
「やらせろ」
 どこか憮然とした様子にも見える表情でそう言った彼に、サンジは言葉を失った。
 この状況で、何を? と聞き返す程サンジも鈍くはない。
 ゾロが何の目的を持って今ここにいるのかを正しく理解した上で、何故か咄嗟に言葉が次げなくなっている自分自身が不思議だった。
 逃げなければ。いや、蹴り飛ばして二度とこんな気を起こさせないようにしなくては。
 鈍った頭ででも、そんな明白な答えは弾き出せていた。だが、それに身体がついてこなかった。呆然と見つめるサンジの目を睨み返すゾロの目には、薄暗闇の中ででもわかる程明確な欲情が滲んでいたのだ。
 ジッパーを下ろされ、中に手を突っ込まれて性器を握り込まれた途端、痺れるような快感が背筋を駆け下りていった。それが男の手だとかゾロの手だとかはもう関係なかった。あからさま過ぎる刺激を受けて初めて、自分の今の状態を正しく認識する事が出来た。自分も彼と同様、ずっと欲情していたのだと。
 ゾロはそれにいち早く気付いていたのかもしれない。自分と同種の欲望を燻らせ続けているサンジに目を止め、同じ状態の者同士手っ取り早く処理し合おうぜという意図の下にこんな事をしているのかもしれない。朦朧と霞んでいく頭の中で、そんな事を考えた。
 ゾロの手は乱暴で、それでも見る間に昂ぶっていく自分の身体が不思議だった。オカズになりそうものなど何一つなく、ただ可愛げの欠片もないむさ苦しい男が目の前にるだけだ。なのに堅い感触の温度の高い手に弄られているだけで、腰が勝手に浮いてしまいそうな程気持ちが良かった。
 早く、早く、早く。その言葉ばかりが頭の中をくるくると巡る。早く出したくてたまらなかった。高まっていく興奮に、どんどんと息が荒くなっていく。
「……てめェ、一人で楽しんでんじゃねェよ」
 頬を歪めてそう言ったゾロは、中途半端にずり下ろされているサンジのズボンを下着ごと引き抜き、大きく足を開かせた。開かされた足の間に身体を挟み込まれ、おいおいなんだよこの体勢はとぼんやり考えているうちに行為はどんどんエスカレートしていった。
 まさかそのエスカレートの先に挿入まで用意されているとは思わなかったが、一連の行為が終わった後もさほど激しい後悔は感じなかった。セックスというよりは、相互自慰のようなものに感じられたからかもしれない。互いの性欲を解消するのに協力し合っただけで、特別な感情など間に介在していなかった。少なくとも、その時のサンジはそう思っていたのだ。
 終わった後、初めて味わう行為の代償のような痛みに呻きを上げながら、もう二度としねェぞこんな事、と唸るような声で宣言した。魔が差しただけだ。そう思ってもいた。生死に関わる程の怪我を負い、ヒートアップしすぎた頭が判断を誤ったがゆえのこの現状なのだと、そう思っていたのだ。
 だがサンジのその言葉に、ゾロは小馬鹿にするように笑って、やなこった、と吐き捨てるように言った。
「前からヤりてェなと思ってたんだ。こんなもん、一回ヤるのも十回ヤるのも大して変わりゃしねェだろ。ケチケチすんなよ」