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ありえねぇ !! 5話目 前編

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バーテンをやっていた経験上、カクテルで生クリームは結構扱っていたから判る。
嫌な予感に身震いしつつ、指で掬って舐めてみる。案の定だった。

「……しょっぺぇ……」

駄目だこりゃ。
塩と砂糖を間違えりゃ、生クリームも泡立つ筈がねぇ。

「セルティ、相変わらず塩と砂糖の区別がつかねぇんだな」

溜息つきつつ小鉢を新羅に返し、どっかり椅子に腰を降ろす。

「彼女は元々妖精だからね。人間の調味料なんて味わった事がないんだから、私達が見て判る違いでも、間違えるのは仕方がないよ」
「だな。ソースとしょうゆも未だ無理だっつーしな」

そんな彼女が、わざわざ帝人の為に、朝から元気にエプロンを身につけてくれるなんて。

「……まぁ、二人ともマジで気遣いありがとよ。竜ヶ峰も得意分野なら、気が紛れるだろうし……」
やっぱり確信犯だった新羅も、白衣を纏った肩を竦めた。

「そりゃ、私だって昨日セルティから紀田君とミカド君の関係を聞いたとき、驚天動地ってレベルで驚いたさ。けれど、今のミカド君にはその記憶は無い筈だし、酷だと言えば酷だよね。16歳で同性との性交渉なんて」

昨日のホモ事件は、病院の外で簡単にセルティに言っておいたが、帝人の首幽霊は号泣しているし、自分自身もかなり混乱していた為、ろくな事を口走らなかった筈。なのに、聡い二人は静雄がこと細かに説明しなくても、数少ないキィワードで、全てを想像して理解してくれたらしい。

「で、私の方は現在、杏里ちゃんの件で粟楠会の赤林さんの連絡待ちなのだけど」
「何か進展あったのか?」
「昨夜あの人から早速連絡があってね。彼女が行方不明になる直前、【折原臨也】と接触していたそうだ」
「……ノミ蟲と!? 何で!?……」
「赤林さん、ダラーズの掲示板を使って、目撃情報を募ったんだ。私もそれをセルティと昨日見たけど、新宿のとある公園内で、彼、日本刀を振り回す来良の制服を着た女の子に、随分執拗に追い掛け回されたんだって。リッパーナイトの夜でも、そんな娘は杏里ちゃんだけだし、情報も多数あって信憑性が高い」
「……あんの野郎、何企んでいやがる……」

一瞬のうちにイラッとした怒りが、腹の中に燻る。
池袋で起こるきな臭い事件なら、情報通なトム経由で、結構静雄の耳に入ってくる。
けれど新宿は隣町でも管轄外だから。
一番危ない男を、疑いもしなかった馬鹿な自分自身を、罵倒したい程だ。

「判った、あいつを一っ走り行って、ぶっ殺してくる」
「違うでしょ。静雄が行って、臨也相手に何を聞きだせると言うの? そっちは赤林さんに任せて。それに君がやる事は別でしょ」
「ああ?」
「何だっけなんて言ったら、いくら温厚な私でも怒るよ。黄巾賊から出てる【ミカド君の処刑宣言】、あれ、無事に取り下げられたの? 最優先事項の筈だけど」

静雄はかしかしと頭を掻いた。
ホモ事件で我を忘れ、今までぽろっと頭から抜け落ちていた。

「……あー、悪ぃ。確認取れてねぇ……」

新羅の眼鏡が、きらりと冷たく光った気がした。

「じゃあ罰ゲームと言う事で、セルティお手製のアップルパイ、半分君の分担だ♪」
「いるか!!」
「今なら生クリームもつけちゃうよ♪♪」
「てめぇが食え!! それに俺は、そろそろいかねぇと仕事があんだよ!!」

《静雄さぁ~ん♪ おでかけ前に一杯いかがですか~♪》
椅子から立ち上がった瞬間、ほえほえと気が抜ける掛け声に脱力した。

『すごいぞ新羅、帝人が、私の故郷で好まれているコーヒーを教えてくれた♪』
続いてセルティが嬉々として、銀色のトレイを差し出してくる。
黒いマグカップを受け取り、温めの液体を一口啜ってみる。
正直驚いた。

アイリッシュコーヒーは、ブランデーとミルクをたっぷり入れるアイルランド風のコーヒーだが、静雄はそれに蜂蜜を加えた、ちょっと甘めの物が特に好きだった。
帝人もセルティも、全く味見ができない筈なのに、これはドンピシャで静雄好みに仕上がっている。

「おいしいよ♪ おいしいよセルティ♪」
新羅もまともな飲み物の出現に、素直な賛辞を飛ばしている。
『帝人がな、塩と砂糖を間違えるのなら、いっそ間違えようのない蜂蜜や黒砂糖を使うと良いと教えてくれた。白砂糖より体にいいから、新羅にとっても健康的だし♪♪ どうしてもっと早く気がつかなかったんだ?』
「そうだね。でもそんなドジっ子なセルティが可愛いんじゃないか♪♪ ぶわっ、げひ!!」


温めのコーヒーを飲み干した静雄は、セルティの地獄突きを腹に食らって沈められた新羅を素通りし、黒手袋を嵌めた手で、帝人の首の頭をぽしぽしと撫でた。

「じゃあ、行って来るから、いい子で留守番してろよ?」
《はい♪ セルティさんと美味しいものを作って待ってますね♪》

例え一時でも、賑やかで明るいこの部屋でなら、帝人も多少現実の辛さを忘れ、癒される事だろう。
静雄は軽く手を振り、安心して【池袋】と言う名の戦場へ、戻っていった。


正直、臨也のノミ蟲野郎を、他人に任せるのは業腹だが、単細胞な自分が、あの口から生まれて来たような男から情報を引き出すなんて、確かに無理だ。
なら、今自分が最優先でやらなければならない事は、ただ一つ。

 

「なぁ、俺、法螺田と連絡をとりたいんだけどよぉ。俺が伝えた伝言、ちゃんとうけとってくれたのか知りてぇんだ」


会社で合流したトムと、取り立てに行く道すがら、上司の許可を得た上、黄巾賊の馬鹿どもを、街で見つけた片っ端からとっ捕まえて凄んでみる事だけだった。