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ありえねぇ !! 5話目 前編

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3.






「い、いくら平和島さんも、言っていいことと悪いことが……、あります!! 俺達が将軍を切り捨てて、あんなおっさんを本当に認めるとか、マジ思ってるんっすか?」

黄巾賊の年少組連中は、昨日得た情報通り、ほぼ法螺田と繫がりはなかった。
逆に、静雄を目の前にしてるのに、こういう具合にガクブルに震えつつも、必死で彼への侮蔑をありあり浮かべる体たらくだ。

「……ったく、法螺田ってメチャメチャ人望のねぇ奴だな。一体どんな男だべ?……」
「俺も知らないっす。すんませんトムさん。こんなんにつき合わせちまって」
「いいっていいって。可愛いミカドちゃんには、俺もここ二日、マジで世話になっちまったからさ。今日ばっかりは、ほとぼり冷めるまで会社にも戻り辛ぇし。それに今もミカドちゃんの病室に護衛を置いているんだろ? 高校一年相手に其処までするなんて、ちょっと尋常じゃねーし。臨也の野郎め、ホントにロクな真似しやがらねーな」

元々、トムも臨也に対して私怨がたっぷりある。
今の彼は幽霊に対する同情だけとは思えない程、キレ具合も半端ない。
ドレッドヘアを掻き毟りつつ、機関車のようにスパスパと煙草の紫煙を吐き出し、ズボンのポケットに両手を突っ込んで闊歩する姿は、高校時代に逆戻りしたように不良そのものだ。

「今度はなるべく老け顔で、成人を迎えてそうな奴らを選んでとっ捕まてみるべ。静雄、あれはどうだ?」
「了解っす」

最早司令塔となった、彼に指差されるまま、自販機の横で屯していた二人組に、一直線で向う。
そして、静雄の姿と形相を見つけて怯え、恐怖に固まり身動きが取れなくなったそれぞれ二人の胸倉を、左右の片手で吊るし上げる。

「おいてめぇら、俺に法螺田の連絡先を教えろ。今すぐにだ」
「「……幹部以外は、しりませぇえん!!……」」

今度は逆に口が軽い。
二人とも一言一句間違えずに、同じ返答を揃って返すのなら、静雄でもカラクリが判る。
こいつらに、徹底して緘口令が敷かれているのだ。
ご丁寧に聞かれたらこう答えろと、マニュアルもどきの回答まで準備しやがって。
腹立つ。


「ああ、静雄。もうイイからやめてやれ。二人ともちょっと携帯見せてくれない? 俺が勝手に調べるべ」

互いの携帯番号を交換していても、脳に暗記している奴など、今時いないだろう。
だが、優しく打開策を持ち出し、二人を地面に降ろしてやったトムの親切に対する返礼は。
律儀に揃って己の電話を地に叩きつけ、靴で踏みつけて壊す暴挙だった。


年長組は、意外と忠義者揃らしい。
これには静雄もお手上げだ。


「法螺田の野郎、とんだチキン野郎だ。のらりくらりと逃げやがって」
「そういやお前、奴をとっ捕まえて、ミカドちゃんの処刑命令を撤回したか確認した後、どうするつもりだべ?」
「そりゃ、それなりのケジメを求めるつもりですけどね」
「例えばどのぐらい?」
「これだけ俺の手を煩わせたんっすから、殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺スメラッと殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス………」
「……静雄、とりあえず駄々漏れの殺気を消そうか。うん、俺が法螺田でもきっと逃げるな、それじゃあ……」


トムに窘められたが、怒りを口に出した瞬間、額に血管がぶちぶちに浮かんできているのが自分でも判る。
そうこうしている内に、また中央池袋公園の真ん前で、黄色のバンダナを身につけた集団に出くわした。
しかも彼らは自分を見つけた段階で、怯えた目でこっちを見つつ、携帯で写真を撮ってきやがった。

どうやら静雄が今、池袋で片っ端から【黄巾賊狩り】をしていると、チーム全体に連絡が回ったらしい。
人の面を見てメールに添付する写真を撮り、その後脱兎のごとく逃げ出した卑怯な集団に、もろイラっと怒りが湧き起こってきた。

「てめぇらあああああああああ、ふざけてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

がっと直ぐ傍に立っていた【侵入禁止】の道路標識を引っつかみ、根元からぱきりと折って、その黄色い群れを追いかける。

「法螺田っていう奴は、何処にいきゃ会えるんだ? 俺の伝言は、ちゃんと伝わってるんだろうな? ああああああ!?」


蜘蛛の子を散らすように、人ごみの中に紛れやがった黄色組を、標識を振り回しつつ追いかける。
思い通りに全然ならない腹立だしさに、武器も力強く大きく振り回した。


「……ちょっと落ち着け。お前何暴れてんだよ!?」
「あああああ?」

ぎらっと目を向けると、そんな自分に怯む事無く、堂々と懐に入り、標識を持つ手を押さえつけ、仁王立ちする奴がいやがる。
門田京平だ。

「……久しぶりだな静雄。黄巾賊の【ダラーズ狩り】は、俺の目にも余ったが、うちのトップが喧嘩を禁止してんのはお前も知ってるだろ。だから、てめぇも街を荒らすのはヤメロ、な?」
「……おいお前、もしかしてトップが誰なのか知ってるのか?……」

門田達ワゴン組が【ダラーズ】なのは、セルティの首事件の折、初集会で見かけたから知っていた。
この口ぶりならばと思い、尋ねたのだが、生憎彼の返答は首を横に振る行為だった。

「【創始者】を、確実に知っていそうな男は一人知っているが、俺は其処まで興味はない。ただし、俺だって【ダラーズ】の一員だからな。暴走したメンバーが目の前にいるなら、体を張ってでも止める義務があると思った」
「……ふーん。まぁそっちは勝手に頑張ってくれ……」


静雄は、役に立たなくなった標識をぽいっと捨てた。
正直言って、戦意が綺麗に失せていたのだ。

門田京平は、高校時代から『こういう奴』だった。
カラーギャングに属していたワルの筈なのに、兄貴肌で面倒見が良く、彼の人柄を慕い、かなりの人数が彼の周囲に集まった。
それは学校の内外でも、一大勢力とも言えるグループを、常に作っていて。

怪力と切れやすい暴走気味な静雄は、常に孤独だったから。
彼と自分は本当に対象的で、正に真逆にいるような存在で。

正直、学生時代は何度彼を羨ましいと思ったかもしれない。
事実、静雄はその頃から彼に一目置いており、今でも少し憧憬の念もある。
だからこそ、今の暴走も酷い事にならず、止まったのだろうが。

だが高校時代、彼は【青】いニット帽がトレードマークだった。
彼らが所属していたのは、静雄の大嫌いなブルー・スクウェアだった筈。


「そういやお前、今日月曜日だよな。平日なのに、ここで会うなんて珍しい」
建築業だか内装だか知らないが、彼は手に職をつけて頑張っている。
それも、静雄が一目置く理由でもある。

「ああ、昨日休日出勤したから、代休だ」
なのに、何故彼は他の三人も引き連れて、ワゴン車に乗っていたのだろう。
道路の路肩に停車し、心配げにこっちを見ているいつものメンバー三人組の視線がうざい。
あいつらも揃って代休……は、ありえねぇ。
まあ考えても仕方がない事だど、とっとと頭を切り替える事にした。

「そうだ門田、ちょっと聞きてぇ事あんだけど」
「何?」
「紀田正臣が、黄巾賊の将軍なのは本当か?」

尋ねた途端、彼は眉を顰めた。


「何で今頃、そんなのを知りたがる?」