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ありえねぇ !! 5話目 前編

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「ああ、ちょっとな。俺をとても良く慕ってくれた少年がいんだけど……、竜ヶ峰帝人っつー子がよ、三日前の金曜日に、池袋でダンプに轢かれ、現在も意識不明の重体になっちまって。その原因がさ、俺と臨也がしでかした自動販売機をぶん投げる戦争見たさだってTVで報じられんだけど、実際は黄巾賊の新将軍を名乗る【法螺田】っつー男の命令で、車の前に突き飛ばされたらしくてよ」

「法螺田ぁ?」

門田は途端、益々いぶかしむ目をこっちに向けてきやがった。

「お前心当たりあるの?」
「嫌、後で言う。先にお前の用件を片付けよう。それで? お前は何処で【紀田】を知ったんだ? 紀田と黄巾賊の関りを調べて、何がしたい?」

「元々紀田の奴は、ちらちらと見かけてたんだ。竜ヶ峰といつもワンコのようにじゃれあってたし。俺が初めてまともに話したのは、竜ヶ峰の病室に見舞いに行った三日前だ。

ぶっちゃけ、俺は竜ヶ峰をかなり気に入っている。
特別親しい友人だって、今なら胸を張って言える仲だしよ。なのに只でさえ重体なのに、法螺田の奴がさ、まだ処刑命令出しやがってるじゃねーか。これ以上肉体を傷つけられたら命にかかわるだろが。
だからさ、俺が法螺田と話をつけようと思って、探し回っているんだけど全然捕まんねぇし、何か黄巾賊もさぁ、旧将軍と新将軍で内部分裂起こしてるっぽいし。

兎に角、俺は竜ヶ峰の為にも、せめて『処刑命令』を撤回させたいんだよ。そんで、その親友の紀田っていうのが本当に黄巾賊の将軍なら、ぽっと出の男に地位をあっさり奪われたこの体たらくはなんだっつー話じゃねーか。そもそも竜ヶ峰が突き飛ばされたのだって、見方を変えりゃ、黄巾賊のトップ争いのトバッチリだぞ」

竜ヶ峰帝人が、ダラーズのトップだったと言う事は、敢えて伏せた。
その結果、一方的に紀田を悪く言う結果になってしまったが、昨日驚かせてくれた上、帝人を散々泣かせた腹いせもあるので、この際無視だと決め込んだ。

「あー、やっぱりそうだったか」
だが、拍子抜けするほど、門田はあっさり頷いた。

「俺もあの事故はおかしいと思ってたんだ。臨也とお前の喧嘩なんて日常茶飯事だし、巻き込まれた竜ヶ峰が、紀田のルームメイトだってのは、前々から知ってたし」

「じゃ、竜ヶ峰の件って、やっぱ黄巾賊の内部分裂が主な原因か?」
「嫌、そっちはどうかわかんねぇよ。ただ、紀田は丁度一年前に黄巾賊を抜けている。戻るなんて、絶対ありえねぇ」
「何で断言できるんだよ?」
「そりゃ俺達は紀田正臣とは浅からぬ縁があるからな。いつもワゴンでつるんでいる、俺達のグループが、ブルースクウェアを抜けたそもそものきっかけは、彼の恋人だった【三ヶ島沙樹】が原因なんだし」

「……ああ、そうだった。ちょっと忘れてたけど、そういや死んじまった女の子って、黄巾賊のトップの彼女だったんだよな……」

黄巾賊の将軍を潰す為、中学生の少女を攫い、痛めつけたリーダー【泉井】が許せなくて、門田達バン組は、人質の存在を知ったその瞬間に、ブルースクエアを脱退し、沙樹救出を強行した。

けれど少女は病院に運ばれても、一度も目覚める事もなく、三日後に死亡してしまった。
将軍はそれで黄巾賊を抜けたのだと、静雄は確かトム経由で噂を聞いていた筈だったのに、昨日のあの病室の行為、それがあまりにも衝撃的すぎた。


(……ああ、紀田に女の恋人がいたという事は、最初っからホモって訳じゃなかったんだな……。ったく、何があいつを変えたんだぁ?……)


「まぁ紀田の件は判った。それより門田、お前新将軍を名乗っている、法螺田って奴をしらねぇか?」
「生憎」
「でもよ、さっき心当たりありげだったじゃねーか」
「……あー……」

今度は門田の方が言い辛そうに、かしかしと黒いニット帽を掻き毟った。

「……確か、泉井の腰ぎんちゃくに、そんな名前の奴が居たんだよ……」
「……あー、泉井?って、誰だっけそいつ?……」
「『ブルースクウェアの元ヘッド』だ。現在刑務所で服役中のな」

呆れつつ言った門田も、それ聞いた静雄も、途端押し黙ってしまった。
双方揃って、どうやら嫌な予感に思い当たったらしい。
お互いの、眉を顰めた顔をまじまじと見つめる。

「……黄巾賊ってさぁ、今、ブルースクウェアに乗っ取られかけてんじゃねーの?……」
「……紀田に限って、彼女を殺された上、そいつらを黙って見てるとは思えねーけどな。あいつ今OB扱いだけど、中二ん時に立ち上げた、思い入れ深い組織だろうし……」
「……おいおい、十四歳でカラーギャングのトップかよ。どれだけ化け物だぁあの餓鬼……」

「まあそう言ってやるな。懐けば素直でいい奴だぞ」

門田がもし、病院でのあの一件を静雄と見ていたのなら、果たして同じ事が言えただろうか?
意識のない帝人の体を、本人の同意無く、犯すような変態に懐かれたって、決して嬉しいとは思えないだろう。

「まあ、新将軍気取りの馬鹿の件は任せろ。元ブルスクの法螺田かどうかの探りは、俺が入れておくから」
「ああ、頼んだ。んじゃ俺はこのまま、黄巾賊狩りをしつつ、新将軍とやらを燻りだしておく」

標識をへし折って振り回しだした途端、消えてしまったトムの姿を捜して四方を見回す。
が、何処を捜しても居ない。
どうやら、……埒が明かないと踏んで、先に行ってしまったようだ。

まあ、今は携帯があるし、追いかけるのは一服してからでいいか……と、タバコを口に咥えた瞬間、ふとワゴンの中で文庫本を手に持つ狩沢と目が合った。

確か彼女は、BLに狂っている達人だ。
もう一個の厄介事に、丁度良い相談相手がここにいるじゃねーか。

ぽくっと静雄の顔が綻んだ。
たった三日で随分帝人に感化されたものだ。
静雄も面だけ見れば芸能人の兄。
彼自身全く気がついていなかったが、十分整っている顔で、純真でわくわくする笑顔を向けられれば、その破壊力はたまったものではないだろう。

案の定、ワゴン車の中でも、わたわたと狩沢が手足を悶えさせ、挙動不審な動きをしだす。

「おい狩沢ぁ、ちょっといいか? 俺、あんたに聞きてぇ事あんだけどよぉ」
「え? シズシズが私になんて珍しい。何?」


渡草のワゴン車のフロント部分に持たれつつ、タバコを吸いつつ待つと、ロリ系美少女のバストアップなイラスト入り扉がガラリと開き、狩沢が不思議そうに這い出てきた。
なので紫煙を勢い良く吐き出してから、ちょっと小声で彼女に耳打ちする。

「俺の友人で、困っちまってる少年が居るんだ。そいつ男の恋人と、ここ一年同棲してたんだけどよぉ……」

途端、ぶんっと顔を振り上げた狩沢は怖かった。
目の色がマジで変わり、ギラギラと怪しい光を放っている。

「それで? その子がどうかしたの♪♪」

人選を間違えたかと思ったが、勢いにタジタジで、もう後戻りできない。

「今記憶喪失になっちまって、すっかり恋心を無くしちまったんだ。でも、家にかえりゃぁ知らねぇ奴が身体の関係を迫ってきて拒めねぇし、戻らなければ生活に支障がでる。そういった場合、どうすりゃその男から逃げられるんだ?」