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墓参り

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 声が徐々に上擦っていく。カイトが頭に載せた手を背中へと回し、優しくさすると、声の震えが大きくなった。
「ボーカロイドに心配されるマスターなんて──居ないよ……っ、マスターの馬鹿!」
 何度も何度も途切れ、そして幾度もしゃくりを交え、感情のせきが崩れたように紡がれる言葉の内容に、カイトは苦笑を禁じえない。とりあえずフォローをしておくべきだろう、と彼は考えそのまま言葉を口にする。

「マスターのこと馬鹿って言ってますけれど、レンはマスターのことが好きでこんなことを言っているんですよ」
「……っ」
「もちろん、俺もマスターのこと、大好きですからね。心配です。そっちで上手くやれているかどうかが。──俺たちには確かめる術が無いですから。なんでも良いので教えて下さい」
 無理な願いだということは、カイトも重々承知しているだろう。彼の紡ぐ言葉は優しく、けれど僅かな悲愴を含んでいた。彼の声にもレン同様震えが走っている。ミクが焦ったようにカイトとレンの名前を呼んだ。二人が怪訝な色で染めた表情を浮かべ、ミクへと視線を向かわせる。
 ミクは小さな声で、けれどしっかりと二人に届くように言葉を口にした。

「泣いちゃ駄目だよ。悲しんでも駄目!」
「……知っているよ、それくらい」
「わかってるよ、ミク姉の、──っ」
「わかってるならいいけど、レンちゃん、泣きそうだったし、カイト兄さんも何だか辛そうだったから……」
 ミクが怪訝を声に表して口にすると、カイトが困ったような笑みを浮かべた。レンはカイトの横で目蓋を擦り、必死に何かを拭っている。少しの無言が場を包んだその時、リンの高らかな声音が無言を遮断するように響いた。

「切れた! じゃあメイコ姉、早く供えようよ」
「わかってるわよ。急かさないの。……カイト、レン、どいてくれる?」

 メイコの静かな声音に、カイトとレンがマスターの前を空ける。メイコはマスターの前へ腰を屈め、枯れた花の処分を行った。ついでリンがメイコの傍に掛けより、枯れた花の変わりに瑞々しい花を差し込む。柔らかな匂いが、リンとメイコの鼻腔をくすぐった。
 リンがマスター、と呟いて手を合わせる。目蓋を閉じ、けれど口唇には笑みを乗せ、そっと息を吐く。メイコも同様に手を合わせた。カイトやレンも、遅ればせて手を合わせる。
作品名:墓参り 作家名:卯月央