Prayer*
「お前…喧嘩売ってんのか…」
ただでさえ疲れと睡眠不足でストレスとフラストレーション溜まってて気分が悪い。
俺がイライラしてるのをわかっていて…なんなんだこいつのこの挑戦的な態度。
火を点けることが出来ないままのタバコを片手でつまんだまま、カイからライターを奪おうとするが、さらに不満そうに頬を膨らせて、仁王立ちで睨み付けてきやがる。
『ハルはまず、お風呂入ってきて目覚まして!眠いのはわかるけど、とりあえず早く頭働く状態にして!』
「わかった、とりあえずその火を俺によこせ。そうすりゃ今より目は冴える。だからさっさとよこせ」
『タバコより先にシャワー!』
「非喫煙者にはこの寝起きの1本のタバコがどれだけ重要なキーアイテムかわかんねえだろうよ」
『タバコって吸ったら体温下がるって知ってる?それよりシャワー浴びてスッキリするほうが健康的でしょ!』
「お前は小姑か…」
目を開くことさえまだ億劫だというのに…意地になってカイのしつこさに付き合っていたら、今この瞬間まで溜め込んだストレスが、ますます増幅しかねない。
──溜息をひとつ大きく吐き出して、観念する。
ゆらりと、静かに身体を起こして、固い寝床ですっかり乳酸を溜めてしまった背中をゆっくり伸ばした。
『はい、いってらっしゃいっ』
やっとの思いで立ち上がった俺の背後にカイがまわり込んで来て、気持ち悪いくらいに弾んだ声で言いながら、両手で俺の背中を押し流す。
「…お前…あとで絶対倍にして陰湿な嫌がらせしてやるから覚えてろよ…」
満面の笑みで、さっきまで俺が沈み込んでいたソファに勢いよく腰を下ろしたカイに、心の底から憎しみを込めて言い捨てて、俺は乱暴にドアを閉めた。