Prayer*
──誕生日…?なんだそれ。
思いもよらない梶の言葉に、まだ回転を始めて間もない脳が、次々に押し寄せる予測不能な事態に、軽く混乱する。
『黙ってるとこみると…マジで覚えてなかったんだな…』
『カイ、行ってるだろ』
梶のその言葉で、一瞬で我に返った。
そうだ。こいつ。
こんなクソ早くから大騒ぎで人の部屋に乗り込んできやがって…
そう思いながら、心地良さそうに一定のリズムで浅く肩を動かしているカイに視線をやると、再び梶が、今度は心持ち静かな口調で話し始めた。
『あいつ、昨日の夜から寝ずにお前の連絡待ってたんだぞ。仕事引き上げたらまっすぐ一課に戻るようにカイにしつこく言われてただろ』
『何度も俺の携帯に電話かかってきて大変だったんだぞ…とっくに引き上げていてもいい仕事なのに連絡がつかないから、ハルに何かあったんじゃないか、って』
「・・・は?」
シャワーを浴びて、いくらか頭は冴えたはずなのに、イマイチ思い出せない。
あいつがひとりで小言みたいにぎゃーぎゃー騒ぎ立てることはロクなことがないから、そういう時はいつも、適当に返事だけしておいて、右から左に受け流す。
さっきあいつが言ってた【昨日の約束】って、コレのことか…?
そりゃ覚えてないはずだ。昨日もあいつの話なんてまともに聞き入れてなかったからな…。
『つーことで。お前今月の休み潰れっぱなしだろ。今日は俺達でお前らの仕事引き受けてやる。んで、お前らには今日1日有給やるから、カイにゆっくりお祝いでもしてもらえ』
「『つーこと』って何すか…。なんでコイツに祝ってもらわなきゃならないんですか…俺はこのままゆっくり眠っていられたほうが最高に幸せでしたけど」
『まぁまぁ…あいつ、ずっと楽しみにしてたんだぞ、お前祝うの。戻ってきたお前を驚かせようと、昨日はわざわざ出先別にするために必死で前の日から色々仕込んでたからなぁ…』
『おかげさまで、一課は昨日の夜からパーティー会場の装いそのままだ』
ああ…だからか。
いつもあいつが何かと足を引っ張ってくれるせいで、余計な仕事が増えてイライラさせられる事が多かったけれど、昨日だけは珍しく情報課との協力を迫られて、あの小憎ったらしい三好に好き勝手にされて、俺はいつも以上にストレスを溜め込んでくるハメになった。
──そうか、これも結局はお前が原因か、カイ。