ボーイズトーク
僕は中身重視だけどね、と小さく付け加えて新羅は言った。中学のときから掴みどころがないというか変わっているというか、ネジがはずれているというか奇想天外というか、そういう風に臨也を見てきた新羅であるが、臨也はまだ彼の予想の斜め上をいくようだった。だからおもしろいんだけど。
そうして新羅ははじめて静雄に同情を覚える。静雄は入学早々、この掴みどころのない変わっているネジがはずれた奇想天外男もとい臨也の目にとまったおかげで、以来たびたび命を落とすか落とさないかのぎりぎりなちょっかいを出されていた。しかしそれに関して新羅は、静雄は静雄だから死なないだろうと高を括っていたし、また自身もぶっちゃけおもしろかったので(これが一番である)、2人の関係をあえて静観してきたわけだが、これはもう、同情せざるを得ない。
「イザヤはさ、すきな子をいじめたいタイプなんだね」
いじめるってレベルじゃないけどと思いながら新羅がそう言うと、イザヤはやっぱり外を見たまま、ふふっと笑って答える。その顔がきしょくて新羅はびっくりする。
「俺は好きな子にはやさしいさ」
「わあまったく信憑性がないね!」
ナイフで切りつけたり、トラックに轢かせたり、あらぬ噂ながしたり、あまつそのせいで、見ず知らずのやつに命を狙わせたりするのがお前のやさしさなのかイザヤ、と新羅は心のなかでつっこみ、そうして改めてこの男の卑劣さを感じる。やっぱ最低だなこのおとこ。
「俺はね、ただシズちゃんのあの怒声だとか、力をいれたときにみえる腕の血管だとか、眉間のしわだとか、俺にむかって吠えるあの表情とか、そういうのが見たいだけなんだよ」
あえて触れずにいた具体名を出された上にとんでもなくきしょい性癖を暴露されて新羅は顔がひきつるのがわかった。今年一番のひきつり具合だ。しかも臨也はなんだかうっとりしながら言うもんだからますますきしょい。鳥肌が半端ないよイザヤ・・・久しぶりにこんなに人と距離をおきたくなったよイザヤ・・・。
新羅は視線をきもちわるい臨也からかわいそうな静雄に向けた。彼はグラウンドの中心でようやく自分に立ち向かってきた不良たちをのしたようで、ぜえぜえ大きく肩で息をしている。そうして、ぎっとこちらを睨んできたので新羅はびくっとした。どうしてあんなおっかない顔を見たいと思うんだイザヤぼくにはわからない。