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【DRRR】月夜の晩にⅠ【パラレル臨帝】

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「ほら、しっかり拭かないと風邪引くよ」
「ううー。目がまだ痛いです」
「人の好意を邪険にするからさ」
「……何が好意ですか。臨也さん、僕、これでも一応成人直前の男なんです。あんなとこ触られて怒らない方がおかしいでしょう?」

あ、完全に怒らせてる。
臨也は静かな声で淡々と語る帝人を、ソファーに座った自分の膝の上に乗せている状態だった。
セクハラ紛い、というかセクハラそのものの行為に対して、それほどまで怒り心頭しているくせにちょこんと臨也の膝の上に乗ったまま無防備に体を預けてくる姿が、怒られているはずの男に反省の色を与えなかった。
髪の毛をタオルドライした後、髪とは違う質感を持った耳を優しくタオルで包み込んでいく。尻尾は触ると怒るけれど、耳は別にいいらしい。その表面の艶やかな体毛を柔らかく拭きとってから、耳に当てないよう気を遣いながら髪にドライヤーを当てる。

「何ですかそれ?熱いです、耳、耳が」
「これはドライヤー。人間、というか日本人は1日1回は入浴する習慣があるからね。その後に髪の毛を乾かすための熱風が出る機械だよ。大丈夫、火傷したりはさせないから」

臨也が器用に指先で髪を梳けば、サラサラとした感触が指の股を流れていく。自分も相当手入れをして艶やかな黒髪を整えていると思っていた臨也だったのだが、さすがにこれには負ける。
そもそも、子供の髪なんだし、こんなのは勝ち負けで判定するものではないのだが。

「ああ、そうそう。君、あれで子供じゃないんだっけ?それで大丈夫なの?月ウサギの繁殖は」
「……?……っな!?」

一瞬、臨也の言っていることが理解できなかったようで沈黙した帝人は、今度こそ頭から湯気が出そうなほど、酷い剣幕で怒り出した。

「いいい、臨也さん!!!!見たんですね!?僕は恥ずかしくて見れなかったのに!」
「あはは、君が足払いしたせいで、正面からばっちり見えたんだけどなー。あれ?なに帝人くん、俺のももっとちゃんと見たかった?今から見てみる?」
「け、結構です!もうちょっと大人らしい態度ってものがないんですか!?それともニンゲンってみんなこんななんですか!?」
「あっははは、ははっははは!」

下ネタばかりを振ってくる臨也に、帝人はついに膝の上から降りて退散してしまう。
臨也は追うことなく、今までその髪を拭いていたタオルを今度は自分の髪に当て、乾かし始めた。
帝人に向けて、笑顔のままで。

「はーー。人間が、というか普段の俺はこんなじゃないよねーー。自分でもびっくりだよ」
「は?」

自分がこの入浴をめぐる戦い?の中で終始笑顔であったことは自覚していた。それも、まざりっけのない、とても素直で柔らかい笑顔を。
普段の自分の行幸を思い出せば、こんな心豊かで穏やかな日々は、生まれてこのかたなかったようにも思えてくる。
人間好きで、人間観察が趣味で、人が様々な様子を見せるのが好きで、いつも裏で糸を引くようなことばかり、人間関係を引っ掻き混ぜて、社会をごちゃまぜにすることを生き甲斐にしてきたような人生だった。
極悪非道、冷酷無残、人非人、絶対に関わってはいけない者、反吐が出る存在。様々なことを言われてきたけれど、善行なんて1つもなかった。
しかし目の前の、人間でもない存在に癒しを感じている。
これはどれほどの価値なんだろうか。

「帝人くん。君さ、昨日言ったよね?俺の目が死んでるって」
「はい。えと、すみません」
「謝る必要はないよ。ずっと考えてたんだ。確かに俺は、毎日を自分中心に面白おかしく操作して、いろんな状況や人々の感情の変化、行動を観察して、毎日充実していると思ってた。思い込んでいた、というべきかな」

帝人の青い目は、急に雰囲気と語調を変えた臨也に対して、もうすでに怒りは収めてその言葉をただただ聞いている。
この、5秒ごとの信念が変わる、と呼ばれた男のこういう面倒くさいところが、案外帝人は気に入っていた。これが人間の本質ではないと分かっていながらも。

「俺は確かに毎日それで面白いと思ってたんだ。大半はつまんなくて、ほんのちょっとの面白さのために様々な糸を絡ませて準備して罠を敷いているだけの作業だったけどね。周囲の人々は口をそろえて俺のことを最低だと罵ったけど、俺は別に構いやしなかった」

そう言えば、帝人に自分が人間の中でもどういったものなのか説明したのはこれが始めてだ。人間社会についてはいろいろと説明して回ったけれど、臨也はこれまで、自分について語ることはなかった。
避けていた、とも言える。
臨也からすれば、帝人は見た目からもただの幼い子供で、自分が数日間しか遊ぶことの出来ない玩具で、明らかにマイナスイメージとなってしまう普段の自分の本性というものはひた隠しにしてきたのだ。軽蔑されでもしたら、遊べなくなる、という策略で。
でもそうして皮肉ばかり並べるいつもの自分を消していたら、いつの間にか自分でも知らない素の自分が出てきて、彼と遊んでいたのだ。
臨也にとってはまさに予定外の事態であり、こうして今、懺悔のように語っているのもまた、全く自分の想定範囲外の状況である。それなのに、気分はそれほど悪くない、むしろ上機嫌なくらいだ。
ちらりと流した視線の先で、帝人は耳をピンとこちらに向けて立て、真っ直ぐな目で臨也のことを見詰めながら真剣に話を聞いていた。
その目に弱いんだ、と、臨也は心の中でごちる。

「つまりさ、俺は本当に人間としては絶対的に悪であり、存在自体が最低だ。でも俺はそれに満足したつもりで、君が『死んだ目をしている』なんて指摘するまで、自分は生き生きと充実した人生が送れていると信じていた。笑っちゃうよね」

臨也が一通り語り終えた、と判断したのか、帝人は言われた言葉を脳内で反芻してからそっと口を開いた。