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【DRRR】月夜の晩にⅠ【パラレル臨帝】

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いつの間にか、ぼんやりと眩しかった月の明かりが薄くなっているように感じられる。
帝人が急に自分から浮かぶのを止めたのだと思った臨也は、一瞬、普段のように非難の言葉を山と思い浮かべた。しかし、今はその状況ではないと口を閉じる。それらの言葉を噛み締めてから、相手の出方を見るべきだ。
手の中に落ちてきたのは、確かに温かくて柔らかい、生きているモノの感触。
罵倒を叩きつけて信頼を欠くには惜しい。

「………あ……」

臨也に抱きかかえられるカタチに落ち着いた帝人という少年は、絶句している。
その様子を見ていた仲間の2羽も、同じように言葉どころか息すら忘れているようだった。
震える声がようやく絞り出されたのは、正臣、と呼ばれた子供だった。その黄色に近いベージュ色をした長い耳は低く伏せられ、毛が逆立っているように見える。

「……み、帝人…おまえ…」
「に、ニンゲンに、触れられてしまいました…」

相変わらずフワフワと白くぼんやりと浮かんでいる2羽は、顔を真っ青にして帝人を見つめている。
抱えている臨也には帝人の顔は見えなかったが、どうやら彼も同じような驚愕の表情をしているということは予想がついた。

「ど、どうすんだ、それ……、っ帰れなくなるぞ!!」
「……っせめて、そのニンゲンは始末しておきましょう」
「わーー、わーーっ!!ちょっと待って!」

再び赤い目をした少女の手の中に細長い剣がギラついた。
混乱してきた子供達の言葉をかき集め、臨也は腕の中にいる生き物に話しかける。

「何?もしかして俺、悪いことしちゃった?俺が触ったせいで落ちちゃったのかな」
「あ、はい、そうなんですけど、貴方のせいというワケでは」
「っみーかーどーっ!?完全にソイツのせいだろ!だからニンゲンのセカイは危ないって、俺があれほど口すっぱく言ってただろーが!!」

怒り心頭といった風の正臣という少年が地団太を踏む。空中に浮かびながら足踏みをする、ということに意味があるのかはわからないけれど。

「帝人はただでさえニンゲンに好かれ易いんだから!!」
「……正臣ー、もう後の祭りだから、次にどうするかを話し合おうよ」

意外に冷静な帝人の声とは対照的に、彼の連れはあわあわと慌てている。
その体が、ふいに明るくなったように見えた。
ずっと感じていた月の光のようなぼんやりとした白い輝きが増してきている。
それは、杏里という少女と、正臣という少年から感じられた。恐らく、先ほどまでは帝人も放っていた光なのだろうが、今彼からは全く見受けられない。

「っあ、正臣くん、帝人くん、時間が!」
「マズイ…、もう強制退却の時間だってのか!?嘘だろ、早すぎる!!」
「でも、でも帝人くんが……」

浮かんでいた2羽の体がふんわりと、来たときと同じように浮かび上がり、そして緩やかに上昇を始めた。
しかし臨也の腕の中にいる帝人だけは、何の変化もなくただその光景を見守っている。
どこか他人事のように不思議な情景を見ていた臨也は、ふと手の中にいるものを見つめ直し、その脇に両手を差し込んで抱えあげた。
急な浮遊感に、帝人が慌てる。

「君は行かなくていいの?」
「あ、いえその、…僕今もう飛べなくなっているので…」
「じゃあどうするのさ」

腕の中で振り返った小さな体は、その瞳の中に不安と孤独を浮かべ、しかしどうしても隠しきれない強く貪欲な好奇心と知識欲を渦巻かせて物語る。
ここに、いたいと。
彼は突然現れた自分を取り巻く環境を激変させる非日常に心を踊らせている。
それは当然、俺も同じ。
人外に興味はないけれど、新しい情報を得ることとこの視線に、臨也は堪らないほどの熱と湧き上がる感情を抱きながら、もう1度大きく笑った。

「じゃあ、俺とくる?」
「止めろ!!帝人、迎えが来るまで逃げろよ、隠れてろ!!」
「あ、お迎えが来るんだ?」

絶叫しながら上空から降ってくる忠告を背中に置き去りにして、帝人は頷いた。先ほどまで仲間の方へと向けられていた耳が、くるりと向きを変えて、完全にこちらの言葉だけを拾っている。

「大丈夫、正臣、杏里さん。僕、次の満月には帰るから」
「絶対に、絶対に迎えを寄越しますから!」
「帝人!みかっ―――――」


 ――――パキン―――――


何かが割れるような甲高い金属音とともに、急激に周囲が静かになる。
もう上空を見上げても、空に浮かぶのは大きくて半分に欠けた月だけであり、ふわふわと浮かぶ小さな体はどこにもなかった。
臨也の手の中に残った体だけが小さく震えて存在を主張する。
相変わらずの池袋の街は、こんな小さな変化などどこにもなかったかのように、今までと同じ顔をして時間を刻んでいた。

「……それじゃあ」

臨也はそっと、手に掴んでいた子供の体を地面に下ろした。普通の子供よりは軽いソレは、小さな着地音をたてて、やや不安定に立つ。
膝を突いて視線を合わせれば、ぼんやりとした月明かりだけが照らし出すセカイの中で、恐怖と興味の葛藤に挟まれた深い蒼眼が光を吸い込んでキラキラと輝いた。
これ以上ないほど優しく見えるようにと微笑んで、臨也は言う。

「俺は折原臨也。よろしく、ね?」
「あ、えと。僕は帝人です。月うさぎです。次の満月まで、よろしくお願いします」

ぺこりと丁寧にお辞儀して見せた体は、もうくるりと一回転することはなく再び顔を上げて、臨也い柔らかな笑顔を見せてくるのだった。