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【DRRR】月夜の晩にⅠ【パラレル臨帝】

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伏せられた耳は、また小さく揺れている。

「臨也さんは『かぐや姫』という物語を知っていますか?ここではよく知られていると聞いていますが」
「ああ、『竹取物語』から派生した童話だね。竹から生まれた女の子が男を手玉にとって、ありもしない四宝を集めさせ、最後には月に帰って行くっていう、アレでしょ」

臨也の解釈方法に毒っ気を感じたのか、帝人は苦笑して頷いた。

「はい。まあそういうものですね。それは、僕らにとっては本当にあった史実であり、過去にかぐや姫と名を持つ者がいました。彼女が地球に下りたのも、成人の儀の一環で、その翁、という老人に触れられてしまったことで月に帰れなくなったと言われています」

緊張した面持ちで、帝人はふうと溜め息をついた。ホットミルクは飲まれないまま次第に冷えていっていた。

「しかし、今の時期は満月の晩に月の光が強くなると、地球に落ちた者にも月の加護を届けることが出来て、迎えに来た者と帰ることが出来るんです。そういう手法で、僕らは同胞を何人もこの地球に送って、様々な情報や文化を集めながら暮らして来たんです」
「だから、君も次の満月には帰れるってこと?」
「はい。仲間が迎えを送るとも言ってくれていましたし、帰れます」

その言葉に、窓の外を振り返る。大きな窓だが、すでに南中して傾いているはずの月はここからでは見えなかった。でも確か今は半月だ。

「今は満ちていく途中なので、あと…そうですね、だいたい9日ほど経てば満月になる、…と、学校では習ったんですけど、それで合ってますか?」
「どうだろう。あとで月齢カレンダーでも確認しとくよ。そんなに月を意識してみたことなんてなかったから、今が上弦の月か下弦の月かも知らないんだ」

知らない言葉だったのか、帝人は少し首を傾げてみせる。
ピンと立った耳のせいで余計に小動物を思わせる仕草は、確かに可愛いと思うが、臨也にとってはそれほど心動く様子ではなかった。そんなことよりもこの世界と人間のことが知りたい、とそう言ってみせる雄弁な瞳の方が、彼にははるかに魅力的なのだ。

「君の友人が、君を人間に好かれやすい、と言ったのはどうして?」

そんな一言を覚えているとは思わなかった、という顔。そしてどうやら何かの、核心を突かれた、という苦笑。どれも人間臭くて、臨也はこの人外生物のことも愛せそうだと嘯く。

「よく聞いていらっしゃいますね」

そう言って帝人は、自分の名前をもう1度名乗った。

「帝の人、なんて、月ウサギにつける名前じゃありません。そもそも僕らはニンゲンを極端に畏怖して、言葉も文字も生活様式もその全てを真似しようとしていますが、毛嫌いしている節があります」
「…ふーん。でも、『かぐや姫』には関係ありそうな名前だね?」

臨也の言葉に、肩が揺れる。
冷静に勤めようとして、その耳だけは馬鹿正直にピクリピクリと動揺を表していた。

「…臨也さんは何でもわかっているみたいに言いますね。……僕の名前は代々継いでいるものなんです。かぐや姫の直系である者が継いでいくものになっていて」
「かぐや姫の子供が、帝の人?あはは、何の皮肉?月に帰る前に帝の子供でも孕んだって言いたいの?」

徐々に臨也のやり口に気付いてきたのか、帝人はやや身を引きながらも、少し悩んで頷いた。

「……史実が本当かはわかりませんが、かぐや姫の産んだ者には耳がなく、まるでニンゲンのようで、それが帝の子供であると彼女が言ったことから、ニンゲンの血の混じった者、という意味を込めて『帝人』という名前がつけられたんです」
「つまり、君はニンゲンの子孫でもあると?」
「確かにそう、とは言い切れませんが……。でも代々の帝人の中にはそうやってニンゲンのような姿格好で生まれてくるものがたまにいて、それが主に地球潜伏の要になってきたんです。ニンゲンに好かれ易いというのは、そういった経緯から、ニンゲンに近いということでして」

僕はこのとおり、全くの月ウサギですが、と、帝人は自分の耳を引っ張った。
臨也はマグカップに付けた口を、ニィっと裂けそうなほど引き上げて笑みのカタチにしていく。
人間を愛していると公言している彼は、ここに愛することの出来る部分を見つけたのだ。
つまり彼は確かに人外な見た目をしているが、その考え方も性格も確かに人間そのもので、そして体には確かに人間の血も一部流れていると。
つまりは、これは愛すべき人間の対象に入ってもいい。
強くて歪んだ自分の人間観察という欲望を向けてもいいのだ。
自分で自分を許すことの出来た臨也は、その口を人のいい笑顔に戻してから話しかける。