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二者択一は趣味じゃないんだ

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粉を篩にかけながらちらりと様子をうかがって見る。
暇そうに俺を眺めていた兄はやがてそれにも飽きたらしく、頭の上にちょこんと乗っかっていた小鳥を構いだした。
つついたり、手に乗せて眺めたり、時々ほお擦りしたり。ずいぶんと慣れたもので、小鳥の方も全然抵抗する気配はない。

…その位置が羨ましい、などと思ったことは一度や二度ではなかった気がする。
そんなことを考えている自分の馬鹿さ加減に辟易するのも、もう何度目だろうか。



「一人が楽しい」などと言っている割に、兄の世界は広い。
何だかんだかつては世界に名を馳せた国の一つである。当然、俺より長く生きている分付き合いも豊富だ。
ブログだなんだと世間を騒がせたあの時――表舞台から身を引いてなお多くの人々に親しまれ、受け入れられる彼の姿を見て、改めてそれがよくわかった。

嬉しいと感じたのと共に、どこか淋しく感じたのも事実。

かつて俺の世界は彼だけで占められていた。
俺を国として成立させるために様々なものを与え、慈しむように護ってくれたのが彼だ。
今なお俺の中で誰よりも、何よりも、大きな存在であることは間違いない。それが「兄」としての彼であり、「プロイセン」としての彼であるから。

誰より大切な人である。
自分にかけがえのないものをくれた人であるから。
いつまでも貰い続けているわけにはいかない、せめて今度は自分がそれを返す番だ、と思うのに。

いつまで経っても、彼は俺に身を預けてくれはしない。
こうして彼の手に護られるだけでなく、自分で自分を護り、動くことが出来るようになった今ですら。


彼の世界が俺だけで満ちることなどありはしないのだ。