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二者択一は趣味じゃないんだ

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――離れていた間に理解したこと。
自分の目の届くところに彼がいないということが、どれだけの喪失感をもたらすか。

遠く思いを馳せているだけでは駄目だった。
彼は彼なりに頑張って生活しているのだと聞いても駄目だった。
同じように自分を思ってくれているのだと、どんなに他人にそう励ましを貰っても、駄目だった。


何もしなくていい。ただ傍にいてくれさえすれば、それだけで。


あの時はその思いだけで生きていた。
その思いのためだけに、再び彼と合間見える日に向けて頑張っていた。

再び彼と共にあることが出来れば、それでよかったはずだった。



統一してからというもの、兄はこういったスキンシップを酷く好むようになった。
昔からやたらとふれあいを重視する人ではあったけれど。多分、離れていた間の寂しさを埋めるためのものだろうと俺は解釈している。
自分が彼を求めていたのと同じように、彼が自分を求めていてくれた。そう考えると心が温かくなる。

そこにあるのは、他のどんな絆よりも確かな肉親としての情。 
彼と俺が兄弟である限り決して消えることはない繋がり。

自分が望んでいたはずの生活だ。
もう彼は俺から離れていくことはないだろう、と思える。
それはとても幸せなことだ。そう、幸せである筈だけれど。

なのに――ああ、何故だろう。
いつから俺はこんなにも貪欲な心を持つようになったのか。
離れていた時には考えもしなかった。



その現状に満足できないでいる、だなんて。



望むものを手に入れてしまうと、人は更なる高みを求めるものだということか。

もっと奥深いところまで余さず求める自分がいる。
明らかに親愛の情からはかけ離れたそれは、醜い独占欲に他ならない。

それを欲するための代償は弟として彼から受ける愛情、延いては兄としての彼。
下手に動けば得るものもなしに、代償だけを失って終わってしまう。
そんなものを欲しがる自分はどうかしている。求める相手が間違っている。
だから、思うだけ。心の隅に留めておくのみ。


しかしその思いはとどまるところを知らず、勝手にどんどん膨れ上がっていくのだ。