狂い咲き 弐
片手に肉まんの入った袋を持ち、菊の家に向かう。
アーサーのおかげで経済が早く回復し、
また香の助言で、菊に会いに行くことを決めた。
―――我もしっかりしなきゃいけねぇあるな…
もしかしたら追い返されるかもしれない。
でも、お互い誤解したままというのは…いやだった。
「……!」
菊の家に着く。
行き慣れたその家には…桜が咲いていた。
季節は冬…。
「狂い咲き……あるか…!?」
嫌な予感が体中を駆け巡る。
我はすぐ菊の家の玄関に向かった。
(ガラリっ!!)
「開いたっ!?」
あんなに用心深い菊のことだ。
こんなことあってはいけない…。
「くっ……!」
甘酸っぱい匂いが鼻を刺激する。
背中がゾクリとする。
―――血の匂い。
「イ…イヴァン……?」
腹を殺られたらしい。
息は……すでに無かった。
「誰が一体……なっ……!!」
紅に染まる床の上…そこに菊の刀が落ちていた。
―――刃先を彩るは赤。
(ストン……)
「そんな…菊が……嘘…あるよな…?」
床に座り込む。
「…あ……」
血の海に手が落ちていた。
胴体から切り離された白い右手。
―――間違いなく菊の手だった…
「あぁぁぁぁぁっ!!!」
叫んでも、もう誰に届かないと知っていて…
我は叫び続けた。