約束、ひらり
――約一年前の春
『内緒だからな、』と静雄に連れられて、帝人は此処にやってきた
そこで目の当たりにしたのは、視界を埋め尽くすほどの薄紅
美しいその光景に、帝人は無邪気に瞳を輝かせ、嬉々とした声を溢した
『凄い…凄いです!東京にもこんな場所があったんですね』
『あぁ、高校を出てから見つけたんだ』
『じゃあ静雄さんの秘密の場所じゃ……僕なんかが知ってもよかったんですか』
『……ばーか、』
くしゃり、静雄の大きな掌が帝人の短い髪を撫でた
最早癖にもなったそれをしながら、静雄は笑う
『お前だから教えたに決まってんだろ』
その笑顔と言葉に帝人は数拍の間呼吸を忘れた後、かかかと顔を赤く染めた
『ぁ、あ……りがと…ござい、ます』
これは、自惚れてもいいのだろうか
ぐるぐると頭で考えながら、帝人はちらりと静雄の表情を伺った
薄紅が背景の世界に見えた、顔を染めるほんのりとした紅
“池袋最強”と呼ばれる彼の、その珍しい姿が双眸に映りこむ
帝人は胸中が暖かいもので溢れるのを感じながら、髪を撫でるその手を振り払うと、静雄の腰にぎゅうと抱きついた