鬼道くんと大介さん
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「……大介さん、お願いがあります! どうか俺がこれから言うことを」
信じられないかもしれないけれど、信じてください!
ブランコの大介さんにそう詰め寄った。俺は焦っていた。
相当切羽詰っているだろう険相に大介さんはぎょっとしていたが、そんなこと構っていられない。
言わなくちゃ。言わなきゃ、悲劇が繰り返される。
今なら、この人になら、言える。
しかし、目先のことにだけに夢中になっていれば足元をすくわれるのはよくある展開だ。俺もその例に漏れなかった。
地面が揺らぐ、……というよりも、ずるりと滑った。天地が逆転する。
背中が土に叩きつけられる。
脳の処理が追いつかない。
ええと。
カラカラと音を立てて転がる何かが目の前を転がるなにかが転がっていったのを視界に入れると、俺はすべてを理解した。
それは、ジュースの空き瓶だった。
先ほど大介さんのおごりで買ってもらい、二人で飲んで、ブランコのかたわらに置いていた、あの空き瓶。
そういえば風が吹いた時、倒れて転がっていた気がする。
それを、このタイミングで。うっかり、踏んでしまった。うっかり、転んでしまった。
そして俺は、そのまま、うっかり、ブランコの支柱に後頭部を強打した。頭のなかで鈍い音が響いた。
暗転する意識にデジャヴに似た何かを感じつつ、俺は心の中で叫ぶ。
――こんなこと、あってたまるか!
大介さんに核心を伝えなくては!
しかし残念なことに視野はぐねぐねとゆがんでゆがんで、世界は修正液のような真っ白に塗られた。
身体がぐっと軽くなる。意識がよどむ。どこか遠くで「きどう!」と、名を呼ぶ声が聞こえる。
そうだ、おれはこの声の主に、言わなきゃならないことが……――