二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
cou@ついった
cou@ついった
novelistID. 13083
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【DRRR】月夜の晩にⅡ【パラレル臨帝】10/31完結

INDEX|6ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 


決別の場所は、始まりの場所へ。
大きくて真ん丸に膨らんだ円形が浮かぶ空の下、池袋の街はいつもと変わらずに忙しなく煌々とネオンを照らし出していた。
誰もいない廃ビルの階段を上ると、錆びた鉄の臭いのする扉の向こうに金色をした何かが揺れる。

「?」

帝人が臨也の服を引いて尋ねようと顔を見上げるが、臨也は満足そうに笑顔を見せるだけだ。
そのまま、扉を越えてあの屋上へと辿りつく。
そこは、暗く陰気な場所だったと記憶していたのに、今はキラキラと輝いていた。

「これを用意してたんだけど、思いのほか時間がかかってさ。君を迎えに行くのが遅れちゃったんだよね」

臨也が得意げに笑う胸の中で、帝人は目を奪われていた。
それほど広くは無い屋上が、一面のススキで覆われている。
満月の強い月の光に照らし出され、その1本1本がキラキラと光を反射して黄金に輝き、夜風になびいてサラサラと涼しげな音をたてた。
まるでそれ自体が発光して輝いているように、光を多く含んだススキ野原に、帝人は息を呑む。
この地上に来て、見た中で、2番目に美しい光景だと思った。
1番目は、今自分を抱きしめている。

「臨也さんが、これを?」
「そ。まあ、そこにいる運び屋に手伝ってもらったんだけどね」

震えそうになる帝人の声に、臨也は少しだけ抱きしめる力を強くする。
ススキを並べ終わったらしい、真っ黒なライダースーツ姿が金色の中で1つ異様なほど黒く見えた。

[臨也、間に合ったんだな。これで良かったんだよな?帝人くんにも聞いてみてくれ]

PDAに浮かんだ文字に、臨也は肩を竦めて笑う。

「ああ、万全だよ運び屋さん。…帝人くん、気に入った?」
「……何と言えばいいのか……、感動して……」

この男から受けた中で最も綺麗で満足のいく仕事をしたセルティは、目の前の光景に目を奪われる子供の様子に深く頷いた。
表情の分からないその姿が、確かに照れながら笑ったように見えた。
少しだけ帝人の頭を撫でると、そのまま、臨也の肩を軽く叩いて入れ違いに階下へと階段を下っていく。どうやら月ウサギの大名行列を見るつもりはないらしい。
セルティも帝人を気に入っていたはずなのに別れも告げずに2人きりにしてくれる気遣いに、少しだけ申し訳ないと思う。
臨也は昼前にセルティに電話し、大急ぎで大量のススキを刈ってきてここに置くように依頼したのだ。
観光地から採って来るのはどうか、と言われても無視して自分も参加して用意した。
セルティの影で出来た鎌が本当に切れるとは思っておらず重宝したことと、セルティの馬が2台付きのトラックにまで変化できたことで実現出来たと思われる作戦だ。初めて他人に感謝を告げようと思う。

「臨也さん、僕がここに来た理由、覚えていてくれたんですか?」
「当然だよ。これで君はようやく成人して大人になれるんだろ」

元々月ウサギは、成人の儀として祭り用のススキを持ち帰ることを目的にやって来る。
その本来の理由を忘れていたのは帝人自身だった。
一面波打つ黄金色に満たされた空間で、帝人はまぶしそうに目を細める。
嬉しそうに帝人を見つめる臨也の表情が、キラキラと輝いて見えた。

「……ありがとう、ございます」
「あはは、俺もこれで大人になれたかな?」

ふざけて笑う言葉に、帝人は耐え切れずに臨也の胸に顔を伏せた。
子供っぽい大人だった男は、泣くことなく笑っている。

「……臨也さんは、僕よりずっと大人じゃないですか…」

声が震える。
月が天に昇っていくのに、その大きさで徐々に近づいてくるような錯覚を覚えた。

「そうかな。俺は今でも君を抱えたまま引き返して、どこかに閉じ込めてしまいたいと思ってるよ?」
「…僕だって、貴方の腕の中でこのまま死ねたらどんなに幸せかと思っていますよ」

初めて臨也に対して、自分の気持ちを告げる。
突っぱねる言葉を向けてばかりいた気がした。自分も残りたいと言ったのは、初めてだった。
それでも臨也は少しだけ強く抱きしめたまま、ゆっくりと笑う。

「……俺は、月を見るたびに君を思い出して泣きそうになるんだろうね」
「はい。僕も月から貴方を想っています」

サラサラを風を受けて輝いていたススキが、一層光り始める。
月の光が濃くなったと気付けば、帝人の体もわずかに光を帯び始めていた。
見覚えのある白く淡い輝きに、臨也はゆっくりと抱きしめていた腕の力を抜いていく。
完全な円を描く月が、近い。
明るくなっていく周囲の光景に、まるでこの一帯全てが光に包まれているようだった。