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【DRRR】月夜の晩にⅡ【パラレル臨帝】10/31完結

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「帝人くん」

手を離してしまっても、帝人の体は重力に抗して浮かんだまま、落ちることなくふわりと浮かんでいる。それは、初めて会ったときと同じ様子だ。
ふんわりと浮かんだ光に覆われる姿は、月の使者と呼ぶに相応しい。



 ――――うーさぎ、うさぎ  何見て跳ねる―――――

 ――――十五夜おっ月さーま―――――

 ――――見てはーあぁーねーるー――――

 ――――迎えに来たよ――――

 ――――迎えに来たよ――――


夜闇の中に、口々に歌う子供の声が聞こえた。
昔に見たかぐや姫の絵本のように天女や空飛ぶ牛車が出てくることはなく、ただ光と声が降りてくる。その全てが、まるで幻のようだった。

「帝人!」
「帝人くん!」

聞き覚えのある声がしたかと思えば、はるか頭上に、かつて帝人と一緒にやって来た小さな子供が2羽、ふわふわと浮かんでいる。
黒耳の少女とベージュ耳の少年に向かって、帝人は笑顔で声を張り上げた。

「正臣、杏里さん。ごめんね、ありがとう!」
「離れろ帝人、お前まだソイツといたのか!?」

再び日本刀を抜いている赤眼の少女は、恐らくここまで降りてきたところで臨也を斬りつけるつもりなのだろう。当然だ。自分は彼らにとってはただの誘拐犯というか、排除しなければならない危険人物として認識されていることだろう。
ふわふわと降りてくる2羽に対して、帝人は逆にふわふわと浮かび上がった。

「臨也さん」

振り返った子供は、黄金の光の中、どこまでも澄んだ深い蒼の瞳を向ける。
神聖な侵しがたい雰囲気を纏った帝人はふわりと、微笑んだ。開かれたままの印象的な青い光から、一筋の光が流れ落ちる。

「泣かないで」

臨也は、自分の方が泣きそうな顔をしながら口元だけ笑みの形をさせて言った。
浮かんだ帝人の頬を伝った涙は、そのまま伝い落ちて、金色のしずくが臨也の頬へと1つ落ちる。まるで、泣けない男に帝人が涙をあげたような見目だった。
その滴も、臨也の頬を伝って落ちた。

「泣かないで」

帝人もポタポタと止め処ない涙を大きな目から零しながら、眉を寄せて囁くように言う。
はるか天へと浮かび上がる姿は、徐々に月と重なり、その眩しさにシルエットしか見えなくなる。
表情が見えなくなったことで、辛うじて笑っていた臨也が悲痛な表情に変わった。
帝人からはまだよく見えているその姿に、優しい声を落とす。

「臨也さん、僕は貴方に死んだ目をしていると言いましたが……」

月の光は柔らかな輪郭をしているくせに、無常に帝人の姿を隠していった。

「…もう、違いますよ……」

すうっと、声が遠のく。
浮かんでいたはずの他の2羽が消えた。
月の中に浮かんでいた影が光に包まれて消えていく。

「…っ来年の十五夜、俺は待ってるから!!」


 ――――パキン―――――


破裂音がして、言葉が届いたかもわからない。それでも臨也はもう1度、月に向かって叫んだ。

「俺は待ってるよ、帝人くん―――――」

辺りを包んでいた月の光は薄れ、空にはただ明るい満月が浮かんでいる。
気が付けば、サワサワと揺れていた一面のススキも綺麗さっぱりなくなっていて、ついさっきまで金色に輝いていた空間は急に色褪せて見えた。きっと世界は同じように、何もなかったように忙しく過ぎていくのだろう。
色褪せて混沌としたこの世界に、置いて行かれた。
けれどもう、この目を死んだ目にはさせない。

空から1本だけ、ススキがゆらりと落ちて、池袋の街に吸い込まれていった。