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moria

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やれどこそこのヤクザの抗争だの、いいやただのチンピラ同士の喧嘩だの、挙句の果てには化け物同士の戦いだのという話も錯綜していて信憑性は皆無に等しかったが。
いくつかはソースも割れている、本当の情報というものもあるものだ。門田が知っている限りでは、暴動の後に起きた爆発で警察が重い腰を上げたこと、しょっぴかれた奴らの中にヤクザの下っ端まがいが混じっていることくらいだった。
「……ああ、知っている。だがあの関係者は殆どサツにしょっ引かれたって話だが」
「本当に悪い奴ってのは、最後までバレないもんですよ」
知ってるでしょう、とおどけて肩を竦めてみせる。押しつけられたフェンスがぎいぃと軋んだ。
「首謀者は折原臨也。爆弾を運んだのが誰かは知りませんが、恐らく彼の信者か彼が懇意にしている運び屋。そして目的は……」
ちっ、と憎々しげに舌打ちをして青葉は視線を下げる。癇にさわる何かを思い出したかのようだった。可愛らしい顔が憎々しげに顰められる。
「ある人物に取り入ること」
ある人物?と門田は首を傾げる。しかし青葉はそれきり黙ってしまって、どうやらこれ以上喋る気はないらしい。襟首を掴む手に力を込める。ぎいい、と骨が軋む。痛みに顔を顰めながら、青葉はそれでも口を閉ざしたままだった。
「何故そこまで詳しい」
青葉を絞め上げながら言う。
「俺も巻き込まれたからですよ」
まったく迷惑なことだ、と吐き捨てる。
門田はそれまでフェンスに押し付けていた青葉から手を離した。これ以上の情報は得られまい、と判断したからでもあり、青葉らが被害者の立ち位置にあったからでもある。ようやっと人心地ついた青葉は、ネコが連れ込まれたワゴンを見やる。漏れ聞こえてきた悲鳴のような声が気になったが、あちらは細身の男と女だけだ。そうひどいことはされていないだろう。
青葉の視線を追いかけた門田は頭に手を当てて何か考えてから重々しく溜息を吐いて、「あいつら、やりすぎてないといいが」そう言った。
やりすぎている、という単語に不穏なものを感じながら青葉は門田の後ろをついていく。白いバンの後部座席を空けて、「もういいぞ、だいたい聞き出せた」と中にいる人物に言葉を投げかける肩越しにひょい、と中を覗く。
痩身で細目の男。ロングスカートの女性。その二人は門田が声をかけると同時に不満だと言わんばかりに口を尖らせた。
「これからが本番だったのにー」
何故か両の手に握られている工具。レンチであったりニッパーであったり、カッター、ドライバーときて果てはトンカチであったりがワゴンの床にも散乱している。どのような『尋問』が行われようとしていたのか想像に難くない光景に、青葉は思わず顔を引き攣らせた。
「あああ青葉!俺すっげえ命の危機だったまじ助かった!」
「うわ、寄んなよお前なんぞに感謝されても困るわ!」
バンから転げ落ちるように縋り付いてきたネコを追い払って青葉は門田に向き直る。
「お前らを疑って悪かったな」
「……いえ」
折原臨也と繋がっていたのは事実ですし、とは言わなかった。
「俺らはもう失礼しますよ」
これ以上関わりたくないという態度を前面に押し出した言葉にも特に感想を抱かず、門田は手を振るだけだった。その態度はある意味当然なものである。
そそくさと逃げるようにこの場を離れた二人の後ろ姿が夕日に溶けてから、門田はワゴンの後部座席でぼーっとしている二人に尋ねた。
「あの男から何を聞き出した」
「なんかねー、折原臨也が俺らを助けた、って言ってたよ」
「最初絡まれてたのはブルースクウェアらしいっす」
最初、というのは爆発が起きる前の暴動のことだろう。
「臨也の奴がブルスクを助けた理由は」
「知らないみたーい」
頬杖をついた狩沢が間延びした声で答えて、遊馬崎がそれに同意した。
青葉と呼ばれていた少年が言うには、臨也が事を起こした理由はある人物に取り入るためだと言っていた。
ブルースクウェアを利用してまで今更取り入らなければならない人物。臨也はヤクザとも繋がりがあった筈だ。ヤクザの誰かの機嫌を損ねて、そいつのご機嫌とりでもしたのだろうか。ブタ箱に入った奴の中にはヤクザの下請けもいたと聞く。それが一番もっともらしい気がした。
門田はそう結論付けて、厄介なことになりそうだとバンに乗り込んで窓の外を眺めた。渡草は暇そうに煙草をふかしていただけだった。


「どこまでゲロった」
早足でバンから離れながら青葉はネコを振り返ることなく聞いた。あの二人の周りに工具が散らばっていたことを考えれば、よっぽどひどい脅され方をしていたのだろう。ネコとて何かしら喋っていなければ無事ではなかっただろう。
ネコは申し訳なさそうに頭を掻いた。気まずそうな様子である。
「折原の奴が俺たちを助けたってことだけ。あとはわからねえって言っといた」
ふうん、と青葉は鼻を鳴らす。
「ネコにしちゃ上出来だ」
「え、ゲロってよかったのか」
「違えよ、馬鹿。わからねえって言ったのが上出来だっつってんだ」
くるり、と後ろを向いた青葉は意地の悪い笑みを浮かべると、
「足りないピースじゃ、正解を導くことはできねぇんだよ」
そう確信めいた言葉を放った。

作品名:moria 作家名:nini