だから、側に居て
「ご実家には電話しなさい。泥棒のことは言わないで、隣が壁に穴をあけたからしばらく先生の家に厄介になるって言えばいいよ。俺に代わってくれればなんとか言いくるめてあげる。警察や大家には俺から連絡とるし」
確かに、臨也の口のうまさなら、帝人の両親を言いくるめることは簡単だろう。でも、そこまで頼ってしまっていいのだろうか。大体、教員である臨也の家に生徒の自分が厄介になるのはあまりよくないことなのではないのか。
「あの、ご迷惑じゃないですか?」
尋ねた言葉は、綺麗な笑顔に瞬殺される。
「どうして?」
そして臨也のコートを握り締めていた帝人の手に、自分の手を重ねた。
「そうだね、君が女の子だったら問題だったかも知れないけど。男同士で問題はないでしょ。確かに他の生徒に知られたら贔屓だ差別だ煩いだろうから、学校では秘密だけどね」
そうして臨也はとどめとばかりにこんなセリフを吐いた。
「君が一番好みの生徒なのに、居なくなられたら俺は困るなあ」