angel lamp2
「ほら、この部屋。どうかしら?」
彼女が扉を開け、僕に中に入るよう促す。
中は、綺麗に整えられており、客間として使われていたものだと分かった。
どうかと聞かれても、僕には、何の関係もない。
「いい部屋ですね」
ぼそりと呟くと、彼女は嬉しそうに笑って、
「洗面台はこっちね。お湯も出るから。一応、必要なものは揃えておいたけれど、何か足りないものがあったら、教えて」
「え?」
驚いて振り向くと、彼女は笑って、
「ここ、あなたの部屋にしようと思って。気に入ってくれると、いいんだけど」
・・・事故の後遺症で、頭がおかしくなったんだろうか。
マスターと同じ魔道士なら、人形の扱い方くらい、心得ているだろうに。
「・・・僕は、睡眠も食事も必要ありませんが」
試しに言ってみると、彼女は悲しそうな顔をして、
「そうね・・・でも、お部屋は必要でしょう?」
相手の言葉が理解できなくて、思わず、まじまじと見つめてしまう。
人形に、部屋が必要?何故?
事故で頭を打ったのか、元々なのか、とにかく、目の前の相手は、まともな感覚を持ち合わせていないらしい。
「・・・あなたが、そうおっしゃるのなら」
それでも、彼女に逆らうことは許されない。
彼女は、僕の所有者なのだから。
僕の言葉に、彼女はふわりと笑うと、
「好きに使ってね。カイトが居心地いいように」
「分かりました」
僕が頷くと、彼女は満足したのか、
「私は、突き当りの部屋にいるから。何かあったら、何時でも言って」
「はい」
「お休みなさい、カイト」
「はい、お休みなさい」
足を引きずり、部屋を出て行く彼女の後姿を、僕は、黙って見送った。
作品名:angel lamp2 作家名:シャオ