にょにょにょー!!
手の中にある買ったばかりの洋服に戸惑いながら帝人は何気ない様子で正臣に探りを入れる。
「ん? 今更だな」
苦笑しながら「もう一ヶ月経ったじゃないか」と言われた。
帝人がわからないというように首を傾げれば正臣は言葉をつけたす。
「人類総メス化。理由はともかくなっちまったもんはなっちまって戻る手段はないってんだから」
正臣からの話を整理すると、集団感染病の一種か遺伝子疾患か知らないが世の男性はみんな女性になっているらしい。
一ヶ月ほど前から徐々に今では世界全体の大体の男が女という怪奇現象。人類は衰退しましたというやつか。
「今はやっと阿鼻叫喚も収まってみんな折り合いつけてるよな。まあお前も含めて一部はまだこだわってるやつはいるけど」
正臣は明るく笑う。
「俺としてはだ、ナンパするのが元男なのは負けた気分だから女力を磨いて見る目を養うわけよ。コスメティックな話題も自分で試せばなお真実味が増して女の子も食いつくってなもんだっ」
「ナンパするんだ」
「当然だ! なんだ、帝人もしたいのか? 今からするか!!」
変わらなさすぎる正臣に安心する。
(一ヶ月の記憶なくなっちゃったのはなんでだろ)
帝人は首を傾げながら正臣に目を向ければ携帯電話を取り出していた。
どうやら呼び出しのようで「わりぃ」と謝られるが今日はとりあえず服を買おうということだった。もうすでに買っているので用は済んでいる。正臣はまだいくつかの店を回るつもりだったらしいが帝人はもう十分だ。
「いいよ。これあるし」
「ダメ。お前はもう少し自覚していろいろ楽しめ。今は女同士だから二人でもプリクラ撮れるんだぜ」
「それ、そんな嬉しいの?」
店の名前の書かれたメモを握らされ帝人は正臣を見送る。
(別に無理に買わなくても、いいんじゃないかな)
帝人はそんなことを思いながら池袋の街を歩く。
「みかプー!」
呼ばれて振り向けばリュックサックを背負った外人の女性といつもの姿の狩沢。
帝人は「こんにちは」と挨拶しながら視線は外人(ハーフかな・・・・・・まさか)に向ける。
「どうしたんすか、帝人君?」
知った声の低さではなかったが言い方がそのまますぎるのでわかる。
「遊馬崎さ、ん」
「ん、んんん? まさか、やっと俺の乳に挟まれる気になったんすか? 遠慮なんかいいっすよ。男の夢っすロマンっす」
「え」
「少女が翻弄されてるの萌えー。いい絵面よ、ゆまっち」
「正直、爆乳より美乳派なので帝人君の慎ましやかなサイズはレベル高いっす。帝人君は二次元すねっ!」
少し残念そうな顔で自分を見たあと帝人を見て興奮する遊馬崎。
ハーフだからかボンキュボンのメリハリボディ。ゆさゆさ揺れる女の武器。
(馴染みすぎ・・・・・・)
胸元の開いたデザインの服と不釣り合いなリュック。
そのあたりがどうしようもなく遊馬崎を感じる。
「いえ、すみません不躾な視線を向けて」
「うぉー!!! 照れる少女いいわ。帝人君、日傘を差すといい。服に合わせて白いレースの日傘がいい」
「さすがレイヤーは小道具にこだわりますねえ」
狩沢の言葉に「うんうん」うなずく遊馬崎。
あまり性別が関係ない二人。
ただ遊馬崎がいつものように腕を組むとバストが押し上げられる形になって視線が奪われる。
帝人は顔を赤くしながら「すみません」と二人に別れを告げる。
後ろから「さらわれないようにねー」「痴漢にあったら燃やすといいっすよ」と物騒な言葉が聞こえたが帝人は居たたまれなさに小走りになる。
下半身に風が入ってきて心もとない。