【DRRR】月夜の晩にⅡ.5【パラレル臨帝】
ひょいとベッドに下ろされた帝人の隣に、臨也が潜り込んで溜め息をつく。
こんなにも2人でいることは楽しいのに、眠ってしまうのが勿体無い。
こうしてまた1日が過ぎて、一緒に居られる日付が1つ失われる。限られた時間がもどかしかった。
「あ、そういえば、臨也さん」
「うん?」
隣に眠る相手の顔がよく見える程度の暗さのベッドの中で、帝人はぽつりと思い出して呟いた。
「前に言ってた、”かぐや姫がニンゲンの大きさになった理由”について何ですが」
「ああ、あれ。分かったの?……もしかして君も出来るの!?」
臨也が食いついて、上を向いていた体を帝人の方へと向きなおす。
自分も臨也の方を振り返り、一瞬だけ帝人が苦い顔をした。その表情はまさに、言うんじゃなかった、と言わんばかりだ。
「いえ、僕も試してはなくて、いや、たぶん出来ません。すみません、忘れてください」
「何ソレ。気になる」
ずりずりと近づく臨也から逃れるように、帝人もずるずると後ずさる。
しかし、いくら余裕があると言ったってベッドの端にはすぐについてしまった。
「で、どうして大きくなったって?俺、君に散々情報をあげてるよね?それも無償で」
「うう」
確かに、ここに来て帝人がしているのは、タダで寝食と情報を貰い、ただひたすらに甘えているだけだ。月ウサギに関する情報を話したりはしているが、臨也にとってそれがお金になるわけでもなく、ただ好奇心を埋めているだけ。
好意を受けるだけの痛いところを突かれると、そもそも自分が振った話題であることもあり、逃げることは出来なさそうだった。
「……臨也さんが実践しそうで嫌なんです。月ウサギは確かに出産制限の影響でおよそ4割が同性同士であるという統計がありますが……」
「…何の話?」
「だから、そのっ」
帝人が観念したように、赤く頬を染めた顔を振り向ける。
臨也を避けるように腕を突っぱねながら、言いかけ、もう1度だけ言葉に詰まり、結局声を吐き出した。
「……ニンゲンと同等の大きさになる条件は、月の加護から離れ、ニンゲンにより近くなるよう触れること。……つまり、……かぐや姫の場合ですと最初が強姦だったという話ですが……」
「……ご、強姦?」
子供に語る代表的な昔話に恐ろしい事実発覚。
翁はロリ・ショタ性犯罪者だった、とか?
「いえいえいえいえ!!でも後続の”帝人”の文献では、口付けによる唾液交換程度でっ」
「……唾液、交換……」
というと、こちらに風いえば恐らく、ディープキスだろうか。
触れる程度のキスなら、臨也は帝人に何度もしたことがある。しかし、唾液を交換するようなものではなかった。親愛に近い情景であり、もっぱら耳にすることが多かったのだ。
「ぼ、僕はそれを試したいとは思いませんのでっ!!」
「何で?」
再びぷいと反対を向いた帝人の横で、布団が大きく持ち上がる。
振り返ってみれば、臨也の手が顔の横についた。
右にも、左にも。
覆い被さるように寝転がる帝人の上に体を浮かせた臨也と、目が合った。
「俺は試してみたいな」
「…っ」
「帝人くん、前に言ったと思うんだけど」
帝人の顔の両側に置かれた手が肘を曲げ、徐々に顔を近づけてくる。
いつものように冗談にして笑ってくれれば良かったのに、臨也の表情は真剣で、そのくせやけに嬉しそうに微笑んでいた。こんなの、避けられない。
「俺さ、帝人くんが好きだよ」
唇が触れる直前に呟かれた言葉は、以前にその言葉を聞いたときよりも、甘く、濃い。
言葉と視線に絡め取られるように息を忘れてすぐ側にある綺麗な顔を見つめていたら、更にぐっと近づいた。
生暖かい感触。
「…っん!?」
帝人がようやくその行為に反応して顔を背けようとする。
が、臨也の手が頬を押さえ、動きを止めてしまう。さらに、顎に手をかけて無理矢理下に引かれれば、噛み締めていた口がパクリと開けられてしまった。
本能的な恐怖に口を閉じようとするも、その隙間にはあっという間にするりと柔らかく熱いものが差し込まれた。
それが臨也の舌であることに気付くまで、またわずかに間がかかる。
「……ん、んん~~っ……」
臨也の舌が、帝人の舌を押さえつけ、子供の小さな口を貪るように、大きく口を開け、更に奥、奥まで入り込む。ぬるりと歯列をなぞられ、怯える舌をしつこく絡め取られた。
上顎を舌先で撫でられた時、帝人の小さな体が振るえ、ビクリと大きく揺れた。
「っ、――――っ!!!!」
悲鳴に似た声のない声に、臨也は慌てて口を離す。もとより、こんな小さな子供に無理矢理、なんて、どこにあったのかも分からないような良心でさえ痛んだ。
嫌がりだしたのかと思い、ふと視線を下げれば…。
作品名:【DRRR】月夜の晩にⅡ.5【パラレル臨帝】 作家名:cou@ついった