I eat up your heart. Ⅱ
風が吹く。
冬が置いて行った寒さがまだ残る都で二人は出会った。
そのときは菊はまだ、今の帝に仕え始めたばかりで
我は前の国で負った傷が疼き続けていた。
「貴方は誰ですかっ!?」
警戒心をあらわにした声が宮の庭に響く。
柳の木の陰で傷を舐めていた我のことだと気付くまで間がかかった。
すぐに若い女に姿を変え、木の陰から這い出る。
「…おなご?」
直感だった。
こいつは我と同じ…妖怪が姿を変えたものだと。
そう思ったときにはもう我は元の…人間と狐の中間の姿に戻っていた。
「…!?」
「お前、名前は?」
「貴方は九尾の狐ですね…」
「…そうある。」
「この国…大和をどうするつもりですか…?」
噂というものは大陸をも越えるのか、と正直に思った。
東にできた国という国をことごとく滅ぼしてきたのは事実だ。
ただ…大和を滅ぼすのか……それは決めていなかった。
「貴方の噂が聞いております…
ですから、答えて下さい。この国を…どうするんですか?」
「…お前、我と同じある。」
「えっ……?」
心を見抜かれたような顔する相手。
「我は…人間の姿を偽って生きてきたある。
お前も何か…人間以外のモノあるな…」
「…………はい。」
あっさり返答してきた。
警戒心も張りつめた空気もどこかへ行ってしまったようだ。
「お前みたいな奴…初めて見たあるよ。
妖怪が国の心配をするなんて…おかしいある。」
「おかしい? 何がおかしいんですか?」
当たり前のことを聞かれたような表情。
「…ぷっ……」
その顔があまりにも真剣なので思わず吹き出してしまう。
「な…何、笑ってるんですかっ!!!」
「スマンある……ぷぷ……」
「やめてくださいっ!!」
「ぷははは…うん、わかったある。
お前、名前は何と言うあるか??」
「…菊、です。」
「それじゃ、菊。
この国は滅ぼさねーある…そのかわり……」
「?」
「我とずっと…一緒にいるよろし。」
作品名:I eat up your heart. Ⅱ 作家名:狼華