そーゆートコ
おまけ その2
空は淡い青色で、薄い雲が浮かんでいる。
まだ暑さは少し残っているののの、空はやはり秋になったようだ。
銀時と桂は道を歩いていた。
大きな道で、人が行き交い、両側には店が軒を連ねている。
「あ」
桂が声をあげた。
ただし、銀時以外は気にもとめないような小声だった。
その眼は向こうからやってくる少女に向けられている。
少女は一緒に歩いている同じ年頃の少女と話していて、こちらのほうをまったく見ていない。
警察庁長官・松平片栗虎の娘、栗子だ。
栗子は友人であるらしい少女に笑顔を向け、楽しそうな様子でやってきて、銀時の隣を通りすぎていった。
少しして。
「……かんざしだったんだな」
ぽつりと桂が言った。
「ああ? なんのこった?」
「父親からのプレゼントだ」
そういえば、通りすぎていった栗子の髪には綺麗なかんざしが挿してあった。
「てめーが渡したヤツか。てゆーか、オメー、プレゼントがなにか知らなかったのかよ」
「ああ。箱は預かったが、その中になにが入っているか聞かなかったし、中を見なかったからな」
「へえ」
桂らしい。
そう感じ、銀時は少し笑った。
それから。
「……かんざしがうらやましいのなら、俺が買ってやろーか」
冗談を言った。
桂は眼を丸くし、だが、すぐに生真面目な表情になる。
「そうしてもらおう。女装して正体を隠す際に使う」
きびきびとした声で返事をした。
さて、なんと切り返すか。
銀時はふたたび口を開く。
「やっぱ、やめとく。ロクなことに使われねーみてェだからなァ」
「なんだと。攘夷は非常に意義のある尊い活動だ」
「んなことを道の真ん中で言うんじゃねーよ」
「じゃあ、かんざしの代わりに別のものを買ってもらうとするか」
桂の眼は店のほうに向けられる。
そして。
「あれがいい」
足を止め、近くにある店を指さした。
その指がさしているのは。
「なんだ、ありゃ」
銀時も立ち止まり、言った。
ぬいぐるみだ。
エリザベスを何分の一かにしたような姿の。
「なんで、あんなもんがぬいぐるみに……」
「それはカワイイからに決まっている」
「決まってねーよ。いや、百歩譲ってカワイイにしても、そのカワイイのまえには、キモ、がつくんだ」
「エリザベスはキモカワイイのではなく、普通にカワイイんだ」
「なに拳にぎって主張してるんだ。とにかく、アレも却下だ」
銀時はふたたび歩きだした。
すると。
「まったく、なぜ、おまえは、あの可愛さがわからんのか」
桂は不満を言いながらも、あたりまえのように隣を歩く。
くだらないやりとりだ。
だが、楽しい。
秋晴れの空の下、くだらないやりとりをしながら、ふたり歩いている。
さっき横を通りすぎていった少女は、もうずいぶん遠ざかっただろう。
その髪に挿されたかんざしは、今も綺麗に揺れているだろう。