angel lamp5
少年の勢いに、内心ため息をついた。
ここで、あのミズチには毒がなかったと説明しても、この子は信じないだろう。
かといって、研究の邪魔をして、彼女がどう思うか。
快く応じてくれるだろうか。それとも、追い返すよう、言うのだろうか。
「・・・分かった。僕が聞いてくるから、ここで待っててくれる?」
「っ!はいっ!!ありがとうございます!!」
「まだ、君の友達を助けると言った訳じゃないよ」
念のため釘を差してから、僕は、屋敷の中に戻る。
書斎の扉の前で、深呼吸を一回。
意を決して、扉をノックした。
「どうぞ」
微かな返事に、音を立てないよう、扉を開ける。
「失礼します。研究の邪魔をして、すみません・・・」
彼女は、椅子から立ち上がると、微笑んで、
「気にしないで。そろそろ休憩しようと、思っていたところだから」
いつもの優しい口調に、思わずほっとした。
「あの、お茶をお持ちしましょうか?」
「ええ、ありがとうカイト。居間のほうで頂くわ」
「はい」
書斎を出ようとして、
「それだけ?」
「え?」
振り向くと、彼女が、申し訳なさそうに笑って、
「ごめんなさい。ただ、あなたが、自分から書斎に来るなんて、初めてだから」
そう言われて、自分が何のために来たのか、思い出した。
「そうでした。あなたに、相談したいことがあるんです」
僕は、彼女に、先ほどの少年の話を繰り返す。
彼女は、首を傾げて、
「そう。その子は、ミズチの毒が原因だと、思っているのね?」
「はい」
「そうね・・・幾つか確認したいことがあるから、その子に、中に入ってもらえる?」
「え?・・・いいんですか?」
思わず聞き返すと、彼女は寂しそうに微笑んで、
「ええ。本人が嫌でなければ」
作品名:angel lamp5 作家名:シャオ