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存在理由 (コードギアス/朝比奈)

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 とにかく一命をとりとめたものの、どうやらかなり厳しい状態だったらしく、意識を取り戻した後もやれ検査だ何だのと、簡単には退院させてもらえなかった。
 傷自体はちょっと頭蓋骨さんこんにちわ~程度で済んだのだが、大量に出血したので失血性ショックを起こしてしまったようだ。なにしろ傷を負ってから失血の応急手当をすることなく立ち回りをしていたのだから仕方ない。その後の治療までもかなりの時間がかかっていたらしく、保てなくて消えた意識はそのまま戻らないでさようなら~だった可能性のほうが強かったのだ。
 奇跡的に視力も失わずに済んだのは、どれだけ丈夫なんだ自分と思うと同時に、なんてラッキーだったのかと思う。視力が低下してしまったのは致し方ないが、それでも日常生活に不都合を感じるほどではなかった。
 そんな病院軟禁の中で、藤堂は見舞いに度々訪れた。
 勝手に飛び出して行って勝手に怪我をしたものの事などほうっておけばいいのに、傷を負わせた責任を勝手に感じているらしい男は、その日、任地に戻ることになったために今後は顔を見せられないのだと告げにきた。
 正直、いちいちマメだと思う。
 思うが、とすると自分はどうすればいいのかと悩む。まだ退院はさせてもらえそうにないし、枢木の屋敷の警備には戻れそうにないし戻りたくない。
 また松代に戻されるならましだが、それすらも不明だった。
 この入院はこの男を庇った事に所以するのだからこの男に責任を押付けても構わない気がしないでもないが、そこまで自分自身の行動に無責任にもなれなかった。
 なので。
 転院という形で病院側は納得させ、男に強引に付き添った。
 責任を取ってもらったのとどう違うのかといえば、自分で彼の言動を把握して今後も付いて行くか決めるために観察に来たことにした。という、建前。
 単にこの男について行くことが面白そうだったとは、一応言わないままでいる。


 それが勝手に藤堂に纏わりはじめたきっかけの出来事だった。






 闇に浮き上がるモニターの光が定期的に形を変え、複雑な色合いを映し出す。
 時折キーボードをたどる音が響き、画面を切り替えては、深いため息を齎していた。
 小さな画面に映し出されるのは大きな人型をした戦闘機で、その前では当然、小さな拳銃など役に立たない。腕に抱えるような小筒を正面から撃ち放ち、その足を止めてはいたが、これは果たして太刀打ち出来ているというのだろうか。
 確かに足止めにはなったかもしれないが、大きな損傷は与えていないし、何よりこの実験では命中するように、動いていない機械へと向けて放たれている。あくまでも耐久性能の実験でしかなく、この悪魔のような機械をどう止めるかの研究ではない。
 奇抜なデザインと構想は圧倒的な優位を保つものであり、それと戦わなければならない事を考えると、どう考えても憂鬱になるのは仕方がない。
「さて……」
 沈黙を破ったのはこの場に居た中では一番の年長の者で、けれどそれは呻き以外のなにものでもなかった。
 それでもいつまでも敵が提供してくれた映像に感嘆しているわけにも行かず、いいかげんこの化け物みたいな相手を倒す方法を考えなければならない。倒す、倒す? 何をどうすればいいのか見当もつかないが、ともかくこの大きな金属の塊を打ち破らなければならないのは確かなことだった。
「とりあえず、逃げちゃうのは駄目なんですよね」
 一番簡単なのは敵前逃亡に尽きる。もちろん本気で言ってるわけでもないけれど、一番新参者の軽口はその場には適さなかったらしい。
「だってこんな機械の塊、本気で対峙してどうこうできるわけないじゃないですか」
 せいぜい突然不意をついた奇襲をかけるとか、想定していなかっただろうところから襲い掛かるとか、それでさえどうなるかわかったものではないのに。
「不意打ちするから奇襲という。策がないなら口を挟むのは……」
 呆れられた声を出されてしまったのは仕方がないが、それを遮ったこの場のトップは、重い口を唸る様にひらいた。
「一理ある。平坦な場に布陣したのでは易々と攻略されるのは目に見えている。かといってあちらにはわざわざ攻略の難しい場に布陣した我らに向かってくる義務はないからな」
 首魁ならはともかく、たかが一地方の小軍。全体の攻略を目論む者が相手にするとも思えない。
 だからこそ今は伏せ、機を見ることに徹するべきだと思う。声高に開戦を訴えるだけの者は現実を見ろといいたい。国力の差は歴然としていて、更に相手にはこんな秘密兵器まである。見ていたVTRはまだ試作の段階のものではあるが、今度の戦いではあの人型の戦闘機をブリタニアは実践投入してくるだろうと言われていた。だからこそ敵国になるだろう者に対して資料を配っているのだ。
 無駄な抵抗は止せ、と。
 問題はあの人型戦闘機をどれだけの数を実装しているかということと、運ぶ手段、その機動に必要な燃料の確保、そして何より運営の実態だ。
 一部隊に一体、それも過分に燃料を食うだけの存在ならば、さほどは脅威にはならないだろう。だが今まで実戦投入していなかったものを急に全兵士分揃って投入してくるということはありえないだろうが、十分な数を揃えたから実戦投入を目論んでいるのだ。そして第一線に並べるように増やしたいからこそ、彼らはここ、日本を狙っているのだ。
 サクラダイトと呼ばれる奇跡の石がある。
 桜石として日本人なら誰もが知っているほどに日本ではありふれた路傍の石のような鉱石だが、それを動力源として利用することが確立され、日本は一大産出国となった。全世界の埋蔵の三分の一とも半分とも言われるほどに埋蔵量は豊富で、実際に市場の七割は日本産のサクラダイトが占めていた。
 巨大な人型戦闘機の燃料となるのはこのサクラダイトを利用したエナジーフィラーと呼ばれるエネルギーパックだった。実際これは珍しいものではなく、ここで使っているパソコンの動力源でもあり、車などの移動手段の駆動にも欠かせない。エネルギー比率は違うが銃もまたサクラダイトがモーターを動かしているのだ。それを考えるとあの人型の場合、大きいだけに大量のサクラダイトを必要としているだろうと思われる。
 キーボードを滑らしてここ数年のサクラダイトの流通を見れば、わずかな間にブリタニアへのそれが数十倍にも膨れ上がっているのが一目瞭然だった。サクラダイトの流通には国際的な会議が開かれ、分配率を決めているのだが、ブリタニアの強引さに日本からの他国へとまわされる分までもが最終的にブリタニアに落ち着いている。同時に巨大人型戦闘機の開発のうわさが流れ、先ほど見ていたような映像も流出されるようになっていた。
「あくまでも推定ですが、起動から停止までは実用の範囲内で考えれば二時間、投入機が多ければ比率はもっと下がるかと思います」