二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

存在理由 (コードギアス/朝比奈)

INDEX|5ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

 駆動燃料がどういう状態になっているのかは判別できないが、一般的な戦闘機の駆動燃料で考えれば、サクラダイトを元にしたエナジーフィラーと呼ばれるエネルギーを使っているはずで、その換装にどの程度かかるのかという問題はあるが、実際にブリタニア本国から遠く離れた日本に攻撃を仕掛けてくる時点で、ある程度は使い捨てになるだろうと思われる。
「そんな大層なものを使い捨てにしてデータを搾取されるとは思わないのか」
「思ってないんじゃない?」
 データを搾取されるほど日本が抵抗できるとは。
 秘密裏に作成していた人型を実戦投入してくる限り、一気に片を付けようとしてくるはずだ。第一、長引けばEUや中華が黙っているはずもない。一気に攻め落として属国とする。
 それが今までもブリタニアが繰り返していた手段で、対日本であればそれはますます顕著だろう。
 そしてそれを促すための細工は日本側も忘れては居ない。
「一度でいい。勝ったように見せかけるぞ」
 それが出来れば苦労はしないんですが。
 負けないだけならそう難しいことではない。けれど勝つ、少なくても勝ったように見せかけなければならない。それはわかる。
 日本は、負けるのだ。
 この国がなくなる。それは実感としてはわかないし、一体普段と何が違くなるのかと想像もつかない。けれど事実としてあと数年……いや数ヶ月、数日かもしれない。その間に日本は存在を失うことがすでに決まっているのだ。
 だからこそ再びの再興を考えるための布石をしなければならない。それが彼が命じられた唯一の使命だった。
 呉に置かれたこの地方の軍本部の面々は、自分たちの出番を考えてない。大国ブリタニアが本気で友好国である日本に攻め込むことをまず疑い、そしてこんな内海までもが簡単に制覇されるなんてことも考えてはいない。
 実質的日本の支配者である京都六家は、ほどほどに国民が納得が出来る程度の敗北を喫してからの降伏を考えている。攻めるといわれて何もしないままに降参したのでは国主としての指導力を失うからだが、徹底抗戦して焦土と化してしまったらそもそも意味がない。
 表面の支配者にブリタニアを沿え、実質的な日本の支配を守るのが彼らが望むことだった。それでいて、再興を考えるための布石をするあたり、いずれは実質的に日本を立て直す考えも少しは持ち合わせているのかもしれない。
 完全な負け戦だ。それでも一泡ふかせる場に居合わせられたのは、幸いだったかもしれない。
「この近辺だと、ブリタニアが狙ってくるのは世界遺産にも指定されている厳島あたりですかね」
 ブリタニアは他国の文化を認めない。差別は国是としているほどにブリタニアとそれ以外を区別する。だからこそ世界遺産などといって世界に認められた一国の文化を属国としてからは完全に潰す考えを有している。
「征服してから潰せばいいところだ。わざわざ潰して行きはしないでしょう」
 戦略的に何かの起点になるようなところでもない。せいぜい通りかかったらついでに壊していくくらいはするかもしれないが。
「厳島か……」
 あいにくこの地方には疎いので、世界遺産に指定されている厳島神社の海の中に生える鳥居くらいしか思い浮かばないが、戦国時代に遡れば戦場にもなった場で、通称は宮島として名が通っていて、島そのものが信仰の対象になっているらしい。せいぜい知っているのはこの程度だった。
 他国の文化を嫌うブリタニアの攻撃対象として範囲内ではあるだろうが、果たしてわざわざ狙ってくるかといえば、もちろん来ない。ならば越させればいい。
「戦国の時代にあった厳島の戦いでは、厳島に建てた宮尾城を狙わせて敵軍を厳島におびき寄せ、更に海から包囲するという戦略をしていましたが……」
 厳島神社はもともと壊れやすく作られている。水上にある壊れやすい一部が壊れるのを承知で、全壊を防ぐという。同じようにおとりを使い、すべてを覆すような戦術を展開できればあるいは『勝ったように見える』戦いが出来るかもしれない。
「他に布陣してさっさと逃げちゃったのが、厳島神社の辺りに逃げれば、敵さんはついでに文化破壊しに付いてきてくれそうですね」
 ついでとついでが重なれば誘き出すのも容易か。
「問題はどこにどう布陣するかですけど」
 戦いの場を厳島にと定めたところで、まったくほかの方法を思いつけない。第一、自由に動かせる戦力がどれほどあるというのか。
 京都からの後押しで赴任しているとはいえ、藤堂はこの呉の指令ではない。一応西の地方では武勇は知れ渡っているが、軍を指揮するという点では未だ不安は残る。総司令という立場にない以上、戦術どころか戦略を指示することさえ難しいのだ。こうしてこそこそと藤堂に心頭している者が集まって話し合ってはいるが、それぞれが将官というわけでもない。
 特に自分は、なぜここに居るのかも実際はよくわかっていなかった。
 まぁ、問われれば、偶然。たまたま。なんとなく。
「毛利元就は厳島の戦いの後、神域を戦いの場にしたことを恥じたと聞く」
 同じような思いをすでに抱いているのだろうか。普段からほとんど変化のない表情には特に変わった様子は見受ける事は出来なかったが、もしこれが自分以外の者だとしたら彼の心に気づけたのかもしれない。
 先ほどまで狭い部屋に藤堂含めて五人入り込んでいたわけだが、どの面子も藤堂について行きます状態で、すでにその絆というか信頼は出来上がっていた。あの枢木の家に忍び込んだ長身の男と女性、それから待ちわびていた大柄な男はもともと藤堂の配下の者で、京都からの客分だった老人を案内していたのだ。
 そんな腹心ともいえる三人に混ざって新参者の自分に入り込める隙間がみつからなくて戸惑ったりもしたが、結局、自分が付いていかなければならないのは藤堂なのだと決めたので、無理にでも入り込むことにした。強引に主張することが傍に居ることにしてもいい免罪符のようにも思える。
 部屋の明かりをつけたので先ほどよりずっと明るいはずなのに、なぜか雰囲気だけはずっと暗雲が立ち込めたままだった。
 この割り当てられた部屋は、藤堂のために呉が用意した部屋だったが、広いわけではないが狭いわけでもないので一緒に使っている。飛び入りで病院を抜け出したままくっついてきてしまったので、他に居場所がないのだ。
 藤堂を信望する者の中には良く思っていない者もいるだろうが、そんなのは見なかった振りをすればいい。
「明日、厳島に行こう思うが、付いてくるか?」
「藤堂さんの居るところが俺の居場所ですから」
 いずれ心の底から同じ言葉を言うことになるのだという予感は、もうずっと実感として考えていたが、その時のその言葉は、まだ心の篭っていない上辺だけのものだった。
 翌朝、まだ霧も晴れないような時間に厳島まで渡る連絡船の乗り場へたどり着いた。当初は観光客を装うはずだったが、結局、軍人としてその場に赴いていた。