angel lamp6
できるだけ時間をかけて、お茶の支度をする。
戻りたくない。
あの手紙を、見たくない。
お盆を持って、のろのろと書斎に戻った。
手紙を呼んでいた彼女が、顔を上げる。
「カイト、あなたのマスターが、今度遊びに来てくれるそうよ」
その言葉に、お盆を取り落としそうになった。
「そう・・・ですか」
「楽しみね」
微笑む彼女に、無理矢理笑顔を向ける。
「・・・はい」
片づけがあるからと、書斎を出た。
台所の椅子に座り、先ほどの手紙のことを考える。
マスターは、彼女に会いに来るだけ。
僕のことなど、思い出しもしなかっただろう。
それでも。
マスターに、もう一度会える。
マスターの顔、マスターの声、マスターの匂い。
苦しい。
胸が苦しくて、息ができない。
どうして、マスター変更が出来なくなるまで、僕を放っておいたのですか。
必要がないのなら、すぐに手放して欲しかった。
彼女が、僕のマスターだったら。
「マスター・・・」
会いたい。
マスターに会いたい。声が聞きたい。
僕のことを、見てくれなくてもいい。傍にいられるだけで。
喉の奥がひきつるような感覚を、必死に押さえていたら、勝手口にノックの音がした。
作品名:angel lamp6 作家名:シャオ