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ありえねぇ !! 5話目 後編

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17時半
岸谷新羅邸は現在、答弁一つ間違えれば最後、崩壊カウントダウン状態となっていた。


「本当にゴメン、静雄!!」

フローリングにはいつくばって土下座する新羅の頭を、後頭部からアイアンクローで握りつつ、池袋を震撼させる怒れる大魔神は、煙草の紫煙をスパスパと吐き出しながら、青い携帯を握り締めた。

仕事を早々と終えた後、トムと一緒に法螺田を見つける為、かなりの数の黄巾賊を狩りまくったが、全く収穫がなかった。
無駄骨にイライラした気分で帝人の首を迎えに来たのに、彼までが忽然と消えているなんて。


「つまり、セルティが出かけるまでは、確かに居たんだよな?」
「うん。彼女のPDAの文からすると、私の父が被っているガスマスクを見たくて、ついて行きたいとかなり熱心に強請っていたようだ。でも、首都高は交機が怖いからね。追いかけっこになったら帝人君の事を守れる自信がないからと、彼女にきっぱり断られていた筈なんだけど」
「……ったく、あの馬鹿……」


非日常なものに、とことん興味を持つ悪癖は、断固止めさせるべきだろう。
彼はきっと、新羅がセルティを見送っているついでに、こっそり抜け出し、後を追いかけていったに違いない。

なんせ帝人は非力だから、自力でドアを開けられない。新羅の家は今日、エアコンを使用していた為、窓もぴっちり閉まっていた。
玄関が開いたのはセルティが出かけるときだけの筈だから、今から丁度二十分前という事になる。


手のひらの中の携帯が鳴り、待ちに待ったセルティから返信が返ってくる。
諦め半分で画面を覗き込めば、彼女の元に、やはり首幽霊は居なかった。
もう直ぐ臨也の家に到着するので、荷物を森厳の所に届け終わった後、帝人の捜索に合流してくれるという。

彼女指定の待ち合わせ場所は、池袋中央公園となった。
最初に首幽霊を見つけてくれた、コシュダ・パワーの探索力は即戦力になるだろうが、セルティ達が参戦するのは、少なく見積もっても一時間後。
時間がかかりすぎだ。

「あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿あの馬鹿……待ってられるか、コンチクショー!!」
新羅の頭を床に捨て、どすどすと玄関に向う。

「ちょっと静雄!! 何処に行くの?」
「携帯屋」
「はぁ?」
「セカンド機買ってくる。帝人に持たせるんだ。子供用でGPS機能付のをな!!」

それから、余った時間は黄巾賊狩りで時間を潰せばいい。
兎に角何かしていないと、街を破壊しそうで仕方が無かった。


★☆★☆★


同日同時刻の17時半。


池袋中央公園では現在、黄巾賊が十数人で徒党を組み、同じく体の何処かに黄色の布を巻きつけている少年二人を、フルボッコにしていた。
明らかに仲間割れだろうが、大勢で少人数をいたぶるのは、見ていて気持ちの良いものではなく、また見つけてしまったのなら見過ごせる筈もない。


「渡草、停めろ。ちょっと行ってくる」
「ドタチン、ほっときなさいって」


門田は、狩沢の制止を無視してバンから降りると、まっしぐらに集団の中に突進した。


「おい餓鬼ども、集団リンチなんてみっともないぞ」
「部外者は引っ込んでいてください。これは俺のケジメなんです」

冷たい声に振り向くと、爬虫類のような危険な目をした紀田正臣が、気配無く、いつの間にか彼の横に佇んでいた。
「お久しぶりです門田さん」

そのまま彼は、ペコリと頭を下げてくる。
芝居がかってもいない、真摯な礼の尽くし方に、門田はますます眉を顰めた。

「紀田。お前、これはどういう事だ?」



★☆★☆★


「戻ったのか?」


そう問われ、紀田は両手を広げ、門田に全身を見せる。
何処にも黄色いものは纏っていないと証明した上で、首を一回、ゆうるりと横に振った。


彼と彼を慕う三人には、昔、本当に世話になったから。
だから、この人達には絶対に嘘をついたり騙したりしないと決めた。
それが紀田なりの感謝と信頼の気持ちである。


彼がここまで門田を信頼するようになった理由は、丁度一年前に遡る。
彼にはかつて『三ヶ島沙樹』という名の恋人がいた。


紀田自身、沙樹は臨也の操り人形で、彼の命令で、自分に近づいてきた事を理解していたし、沙樹自身は臨也の役に立つ事で、彼に自分をもっと見てもらいたくて。
紀田は帝人への叶わない恋情を断ち切る為、彼女は臨也にもっと目をかけ愛して貰う為、お互いがお互いを利用し、体関係を結んだのだ。


紀田は、そんなどろどろした計算づくめの関係だと割り切っていたのに、抱かれた沙樹の方が、日を追う毎に気持ちがみるみる変化していった。


正臣の心が、本当は自分に向いていない事を知っていたけれど、それでも抱かれた事により、意外と情に怖い彼が、もう自分を切り捨てられない内側に入れてくれているのだと勘の良い彼女は気がついて。

後は泥沼だった。

正臣の、本気の愛情を欲しがった彼女は暴走を始めた。
彼の唯一無二になりたくて、部屋に押しかけてきて勝手に住み着き、過去を詮索し、携帯を勝手に盗み見たりパソコンを調べて、全ての女の影を追い払おうとして、彼を雁字搦めにして束縛しだしたのだ。

これに正臣だって辟易し、速攻で沙樹から逃げるようになった。
それが彼女の目には、彼に別な女ができたと勘違いする十分な切っ掛けとなり、彼の心を取り戻したい彼女は、臨也に助言を求めたのだ。

結果、彼の口車に乗って、いいように利用されてしまった。
自ら、当時黄巾賊と盛大な縄張り争いを繰り広げていた、ブルースクウェアの溜まり場に赴き、取っ捕まって。
紀田をおびき出す道具に使われた挙句、リンチされ、ボロボロに傷つけられて。

結局、最終抗争から三日後に、病院で死ぬ羽目になったのだ。

その捕まってリンチにあっていた三ヶ島沙樹を、助け出し、病院に運んでくれたのが、当時ブルースクウェアに所属していた、彼らワゴンの四人組みだった。


彼女は助からなかったけど、所属していた組織を裏切ってくれてまで、沙樹にしてくれた恩義は、決して忘れてはならない。
だから、正臣は彼らだけは別格として礼を尽くすと決めたのだ。


「俺は今、『ダラーズ』です。組織だの幹部だの関係ない、ただの一兵卒です」
「にしては、黄色い奴を、随分大勢引き連れているじゃねーか?」
「ああ、こいつら」

紀田は自嘲気味にくすりと笑った。

「法螺田って新将軍気取りのアホが、この俺の処刑命令を出しやがったとかで、心配して進んで護衛を買ってでてくれる、そんなお節介な奴らですよ。俺はもう黄巾賊と関係ねーって言うのにさ、いい奴らでしょ?」

尤もな事を並べてみたが、門田の目は厳しかった。


「お前、また前と同じような、荒んだ目をしてるぞ」
「ああ、やっぱ、判ります?」
「今も、本心は隠してただろ?」
「ははは」
「お前は俺達に嘘はつかねぇが、変な弁で誤魔化しまくって、肝心な事は隠しやがるからな。一回、腹の底を割って話さねぇか? お前、何かしでかす気だろ? 法螺田とガチでバトルする気なのか? この街を巻き込んで引っ掻き回すようなら、俺だって黙ってねぇぞ」