angel lamp7
食事の後、彼女はまた、書斎にこもる。
することもなく、僕は庭に出た。
怖い。
何故彼女は、何も教えてくれないのだろう。
今の研究が終わったら、ここを引き払うつもりだということを、何故、僕に言ってくれなかったのだろう。
怖い。
もう二度と、一人になりたくない。
気を紛らわせようと、そっと口を開く。
いつか、マスターが教えてくれた歌。
掠れた声は、酷く耳障りだけれど。
もう一度、歌える日が来るだろうか。
微かな衣擦れの音に、驚いて振り向いた。
「あ・・・ごめんなさい。驚かせてしまって」
そう言って、彼女はふわりと微笑む。
「綺麗な歌。マスターに教えて貰ったの?」
彼女の言葉に、何も言えずに俯いた。
振り向いたときに見た、一瞬の表情が、頭から離れない。
「そろそろ、お茶の支度をしましょう?もうすぐ、二人も来てくれるわ」
「・・・はい」
マスターに会える。
それが嬉しいことなのか、よく分からなくなった。
マスターに会いたい。
けれど、「今」は来て欲しくない。
今は、彼女と二人だけでいたい。
「ごめんなさい、カイト」
彼女の小さなささやき声が、胸に刺さる。
作品名:angel lamp7 作家名:シャオ