angel lamp7
「あなたの研究にも、興味を示しているの。資金を援助してくれるから、これで、元の研究を進められるわね」
マスターの弾むような声に、彼女はぎこちなく微笑んで、
「そう・・・良かった。どんな人?」
「作曲家よ。ピアノが弾けるわ。自分の曲を歌わせるのに丁度いい人形を、探していたの」
マスターは、彼女を離すと、僕の方を向いて、
「馬車に乗りなさい、カイト。新しいマスターに会いに行くわよ」
「で、でも・・・僕は、歌えません・・・」
こんな掠れた声を、欲しがるはずがない。
でも、マスターは笑って、
「分かってるわよ、そんなこと。感謝してね、あなたに、新しい体を用意してあげたのだから」
「え?」
新しい体・・・?
でも、それは、僕じゃない。
どんなにそっくりに作ろうとも、人形にはそれぞれの人格がある。
マスターが、新しい人形を作って、それを引き渡すのなら、僕には関係ないことのはず。
「どういう・・・」
「それは、彼女に感謝して。今までの研究を中断してまで、新しい研究を完成させてくれたのだから」
驚いて、彼女を見た。
いったい何を?
彼女は、何を研究していたのだというのだろう?
彼女は、顔を伏せ、
「私・・・そんな、大したことは、してないから・・・」
「また、あなたの悪い癖ね。自分の成果は、もっと堂々と主張しないと、誰も気づいてくれないわよ?」
マスターは、仕方ないというように、首を振って、
「今までは、人形それぞれに人格があって、変更はきかなかったでしょう?それを、彼女が、人格を新しい体に引き継げるようにしたの。だから、あなたも、古い体を交換できるのよ。嬉しいでしょう?」
マスターの言葉に、何も言えなかった。
彼女は、僕が邪魔だったのだろうか。
厄介払いがしたくて、わざわざ僕を連れてきたのだろうか。
ただ、実験材料が欲しかっただけなのか。
倉庫から、古い人形を引っ張り出してきて・・・
「カイト」
囁くような声。
彼女が僕に近づいて来て、そっと手を取る。
「黙っていて、ごめんなさい。でも、期待を抱かせて、誰も見つからないなんてことになったら、と・・・」
「何で・・・」
それしか言えなかった。
聞きたいことも、言いたいことも、沢山あるのに。
彼女は、顔を伏せると、
「ごめんなさい・・・あなたを、無理矢理連れてきてしまって・・・」
作品名:angel lamp7 作家名:シャオ