angel lamp8
目を開けると、見覚えのない天井が見える。
手に触れるシーツの感触を、ぼんやりと確かめていたら、横から声がした。
「お目覚め?ずいぶん、無茶なことをしたものね」
「マスター・・・」
顔を横に向けると、マスターが椅子に腰掛けて足を組み、僕を見つめている。
「あら、私のこと、まだマスターと呼ぶのね」
その言葉に、僕は笑みを浮かべた。
以前なら、身を竦めて、次の言葉を待ったのだろうけれど。
「他に、呼び方を知りません」
「そう」
マスターは、髪をかきあげて、
「どうするつもりだったの?」
その言葉に、僕は天井に目を向けて、
「帰るつもりでした。彼女の元に」
「彼女は、マスターではないのに?」
そう。
古ぼけた僕の体では、マスター変更は出来ない・・・。
「それでも、帰るつもりでした」
「どうして?」
マスターの言葉に、ふっと笑いを漏らす。
きっと、マスターは笑い飛ばすだろう。
「彼女のことが、好きだからです」
マスターは、笑いもせず怒りもせず、じっと僕を見つめて、
「人形に、恋愛感情はないわ」
「僕にはあります」
僕は、顔を向けてマスターを見た。
マスターの目を、まっすぐに捉える。
「僕は、彼女が好きです」
作品名:angel lamp8 作家名:シャオ