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取り置きアクセント

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触れられなくても生きものに近付くのはまだ怖い。しかして温もりが恋しい。だから無用に自分を苛立たせない、喋らぬ花が好ましい。丈夫である樹木だともっと安心する。
また中でも桜がすきなのだと言う、平和島静雄さんというひとと平穏な昼下がりに話す。お揃いですねと笑えば笑み返してくれた。それがまた心がほっこりと暖まるもので、日々に時たまある戸惑い事にささくれていた心がやんわり和んだ。



「やっぱり桜が特にいいな。…独り言も堂に入ったもんだ」
校舎の端に並ぶ桜の木の下で、そんな呟きが耳に入った。
「えっと、独り言を聴いてしまってすみません」
波長が合ったのか、ともごる相手の小さな呟きはひとまず置いて尋ねる。
「この桜の木の下に埋まってるって本当ですか?」
「あ?」
おっかない顔になってしまったので慌てて声が跳ねる。
「わ、いきなりすみません。此処の桜があんまりにも綺麗なのを思い出しまして」
「ああ、俺もそう想う」

そうして柔らかな笑みを浮かべたそのひとと昼寝仲間になるまで、長くは掛からなかった。
作品名:取り置きアクセント 作家名:じゃく