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やっちゃった

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誤解が深まります


気まずい思いをしながら夜明けのコーヒーを堪能したのち、そそくさと帝人は出て行った。
当然昨晩いたしてしまった後で風呂に入っていなかったので、思いっきり中出ししたから処理をしなければ危険なはずだが、それをオブラートに包んで告げる術を臨也は持ち合わせていなかった。
「あのさぁ・・・お風呂・・・・」とまではさすがに言ったが、すぐさま帝人が「いえ帰ります。とにかく帰ります」と顔を強張らせて返されたので頷くしかできなかった。
そんな別れ方をした2人が、偶然以外の方法で再会できるわけもない。

帝人は(気付かれた!?気付かれてない!?どっちにしろ今会ったらまずい気がする・・!)とチャットの出入りすらしなかった。
そして帝人がチャットに上がらないことに対して臨也は(避けられてる・・・!気まずいからなのか嫌われたのか判断できない!!)と顔色を悪くしていた。

とっとと告白しろ、と状況を知っているものがいたら言っただろうが、帝人は臨也の人間性を全く信じなかったし、臨也は嫌われたくない一心で動けなかった。
そこへ一筋の偶然という名の光明が差した。
2人がやっちゃってから軽く一週間は経過したある午後の日だった。


「「あ・・・・っ」」

異口同音にあげた声は少年と青年のもの。
紅茶の入ったカップを両手に握ってソファにちょこんと腰かけていた帝人と、リビングのドアを開けた臨也の声である。

「・・ひ、ひさしぶり・・・だねぇ、帝人君」
「あ、え、えぇ。はい、こんにちは」

口の端が引きつったような笑顔の失敗作を2人して作りながら、ぎくしゃくと顔をそむける。
帝人はただセルティに誘われ、二つ返事で妖精と闇医者の愛の巣(新羅談)に遊びに来ていた。
そこに(帝人君に会ったらどうしようどうしよういやどうしようもない)なんて脳内エンドレスリピートを繰り返しながら仕事で池袋に来ざるを得なかった臨也が、例のごとく静雄に自販機を投げられ一生懸命戦った挙句、怪我をしたわけである。
旧来の友人である新羅に怪我の治療を頼みにきたら、まさかの鉢合わせだ。ある意味運命的かもしれないが心構えができてなさすぎる。
そんな2人のぎこちなさに、帝人と同じソファに座りテレビを見ていたセルティがない首を傾げた。
家の中なのでヘルメットは外しており、黒い影が首の袂にたゆたっていたが、ご丁寧にその影で?マークまで作っている。

『2人ともどうかしたのか?新羅なら奥にいるぞ』

最初は2人に向けて、後半は臨也に向けてPDAを見せた。
それに対して帝人は「いえ、別に・・・」ともにょもにょと誤魔化したが、臨也ときたら「あー、あぁ、あー・・き、傷が痛むなぁ。早く手当してもらおう!」なんて役者ならばすぐに舞台から引きずり降ろされそうな棒読みで叫ぶと、奥へと逃げるように去って行った。
なんとなく無言になったセルティと帝人だったが、すぐさまもう一度

『本当にどうかしたのか?』

なんてPDAを見せられてしまった帝人が(臨也さん恨みます・・!)と心の中で盛大な舌打ちをしながら、必死に誤魔化した。



「うわ、これまた派手にやってるねぇ」
「うるさいなぁとっとと手当してくれる?」
「はいはい。医者使いが荒いにもほどがあるよ」

医者は医者でも闇医者だろ、と実に複雑そうな表情で突っ込みを入れる臨也に、ふむ、と新羅は首を傾げた。
学生時代から付き合いのある2人だが、臨也のこんなに心情がよく表れた表情を見るのは珍しい。アルカイックスマイルを浮かべているのが新羅のよく知っている臨也の基本スタイルだ。
けれどそんなところを指摘する新羅ではない。セルティ以外はどうでもいいからだ。
なので大人しく手当を開始した。

「君も静雄にちょっかい出すのやめたら?君が負ってる怪我のほとんどは静雄によるものじゃないか」
「今さらやめれるわけない・・っていうか、やめてほしいならシズちゃんが死ねばいいんだよ。そしたら俺だってこんな無駄なことしなくてすむようになるんだし、シズちゃんが悪いんだよ」

そして静雄に喧嘩の火元をなすりつけるのも臨也の基本だ。
静雄との戦争にかかわらず、池袋で起こる面倒な事件の火種はほぼ臨也が所持しているようなものだが、それを責任とは決して感じていない男である。
それにしても口を尖らせてふくれっ面で愚痴を言うのはやめてくれないだろうかと新羅はげんなりする。男の拗ねた表情など見ていて楽しいもんじゃない。当然語尾には(セルティなら可愛いけど!)がつく。

「臨也の考え方なんて知ったことじゃないけど。でもほら、恋人とかできたら心配するんじゃない?私もセルティが危ないことに巻き込まれてないかって普段からドキドキビクビク心配してるんだよ!あぁセルティ、君がここにいてくれるそれが奇跡だ!」

両手を広げて天を・・というか天井を仰ぐ新羅に辟易した表情を浮かべていたが、そのセリフの一部に耳が奪われた。

「・・・恋人が、心配する、か・・・」

脳裏で帝人が目に涙を浮かべながら「心配、したんですよ・・」と上目づかいにきゅっと手を握ってくれる映像まで流れた。

(いいね・・・それいいね・・!)

急にニマニマし始めた臨也に、セルティに愛の言葉を叫んでいた新羅がようやくこちらへ戻ってきたが、笑い声を上げながら

「あはは臨也には関係ない話だったね!ごめんごめん!」

とパタパタ手を振るのに対してムッとする。
脳内再生していた帝人の姿が、先日の生々しい肌色の映像に切り替わる。

(そうだよ、帝人君だってやっちゃえるぐらいには俺のこと好きなんだしさ!嫌だったら俺からナイフ奪って刺すぐらいのことはできる子なんだし!そうじゃん帝人君だって俺のこと少しくらいは・・・っ!)

「っ、お、俺だって恋人ぐらい!」

ぐっと拳を握って構える臨也に、新羅は憐れみを含んだ眼差しで

「臨也・・・気の毒な話だけどさ、信者は恋人とは違うんだよ?牽強付会、自分の理屈だけで人を恋人扱いするのはいかがなものかなぁ」
「ちっがぁう!!そんなじゃなくて、か、か・・・かわいい、恋人、が、で・・」

(できたら・・・帝人君が、俺の恋人とかっ、恋人とか!!)

頬を赤らめる臨也はなかなかに目の毒だったが(目と精神にダメージを負うタイプの毒で)とりあえず突っ込みを優先した。

「できたの?それなんて艱難辛苦?」
「俺の恋人になるのがそんな試練!?って、ちが、その・・・・で、できたらいいなー、なんて・・・」
「いざや・・・っ!!」

どんどん声が小さくなっていく。
仕舞には顔を強張らせて出て行ってしまった先日の帝人の姿を思い出して、脳内映像と現実の対比に肩が沈む。
そんな臨也の姿を見て、新羅は流れてもいない涙をぬぐった。

作品名:やっちゃった 作家名:ジグ