やっちゃった
物珍しさか、身近にいたからか、どちらにしてもやったからって自分が臨也の特別になれるわけでもないし、とため息をつく。
「臨也さんの恋人にマクロぐらいの確率でなれたとしても、一般的な恋人同士になんてなれるわけないし、臨也さんだもん。俺と付き合いたいの?いいよーでも特別とか思いあがったりしないでよね、とか言うんだ。絶対言う」
どんなことがあっても帝人の中の臨也像は最低だ。
が、臨也をよく知っている人間(+妖精)に聞けば、おそらく帝人と同じ想像をするだろう。
それでも臨也のあの自信満々な笑みや、料理を作る自分に子供っぽくまとわりついてくるところを思い出せば、自分でも本当になぜかはわからないのだけど
「・・・・・なんで好きなのかな、最悪」
ふぅ、と肩を落とす。
こんなに望みがない、しかも付き合えたとしても先が見えない恋なんてしたくなかった。
「そうだよ、どうせ付き合えても苦労するだけだし。中二病だし、お金ありそうだけど、顔いいけど、それだけだし」
指をたてて臨也のダメなところを数えようとする。
「・・あ、声もいいか・・・背だってあのくらいあったらいい感じだよね。髪とか指とかもすごく綺麗で・・・・・」
折り曲げていくたびに、これは違うぞ、とハッと気が付く。
「いやっ!!でも人に迷惑かけるし!友達だっていないし!面倒くさいタイプだよ!だからっ・・・・・・・もぅ、ホントに最悪!」
置いたままの雑誌に両手をバンッとつける。
指の隙間から見えるのは、あのゴシック体の派手な文字。キツイ眼差しで見つめながら、唇からこぼれた言葉は
「・・・好きな料理、何かなぁ」
どさりと重い荷物を畳へ降ろす。
ビニールが食い込んで両手が痛かったけれど、先輩のためなら、と年よりもさらに若く見られる少年はため息を飲み込んだ。
「おつかれー」とその先輩が声をかけてくれるだけで嬉しくなってしまうのだから、仕方ないなぁと薄く笑みを浮かべる。
ついでに言えば買い出しの費用も自分持ちだが、作った料理は今のところ全部ブルースクウェアのメンバーが食べているのだから構わない。
まぁ先輩の心を掴んだあの情報屋は死んでしかるべしと本気で思っているが、顔には出さないで「これどこに置けばいいですか」と言うに留めた。
ぶつぶつと携帯と本を見ては呟いていた帝人が、突然何かに気付いたように顔を上げた。
「臨也さんが僕のこと好きになってくれたらいい・・・くないよね。僕の破滅だよね」
「これだけ料理の腕上げながら言うことじゃないですよ先輩」