【臨帝】SS【詰め合わせ】
【きおくのそこ】
「…いざや、さん?」
暗闇に光る、あかいひとみ。
噛みつくように吸い付かれた肌をちろちろとなぞる舌も血のようにあかかった。
「………夢、か」
いや、現実、だった。あれは、昨夜のことだ。
まだ肌に残る彼の感触に、温度に、匂いに、身体の奥から何かが湧き上がろうとするのを、帝人はぎゅうと目を瞑ることで押さえつけた。
窓から差し込む光が、あと数十分もすれば街が起き出すことを告げている。
「……学校、行かなきゃ」
また帰りに彼と会うだろうことを考えると、気怠さは抜けなかった。
作品名:【臨帝】SS【詰め合わせ】 作家名:志保